「ふたばちゃーん!」
「ひあっ!?か、かずはさん……!む、胸と尻尾、触るのやめてください……」
あれから二日、私はシフト表の予定通りセクサロイドふたばの体へログインしていた。
待ち遠しかったこの瞬間、胸の重みと尻尾の感覚、この前おじさまに付けられた胸の噛み痕も綺麗に消えている。
狭く真っ白な壁に覆われたセクサロイドメンテナンス用の個室、そこを出て目の前に広がる控室の光景に「戻ってきた」と息を吐く。
私の姿を見たかずはさんの反応もまた嬉しい、過剰なスキンシップはどうかと思うけれど。
「ごめんごめん、でも初仕事だけで来なくなる……って子も多いから」
なるほど、とかずはさんの言葉に心の中で頷く。
二人で並んで着替えながら、私の最初のお仕事を頭に思い浮かべれば、その言葉もよく分かった。
おじさまに出会うなりいきなりのディープキス、あれは驚いたけれど、むしろそれで済んだ、と言うべきだったのだ。
セクサロイドはお客様の性的な要望を拒否できない。
その大原則を前に、キス以上……例えば、フェラチオを強要してくる場合だってあるだろう。
運悪く初仕事がそんな相手だったなら……そう思えば、私の席が空いていた理由も何となく察せる。
かなり入れ替わりが激しいであろう事、それは想像に難くなく。
「よし、それじゃあ今日も頑張ろうねふたばちゃん」
だからこうやって、経験を持つ子をサポートとして付けケアをしてくれてるんだと思う。
優しく握られた手に自然と顔がほころぶのを自覚しつつ、気にかけてくれる相手がいる事への安心感が心地よい。
「うん、今日もよろしくお願いしますかずはさん」
私からもその手を握り返し、一緒にホールへと出ていく。
心の片隅に、今日あのおじさまは来ているだろうか、と僅かに期待しながら。
言葉には言霊が宿るというけれど、よもや今日控室で考えたことが現実になるとは。
私の目の前に垂れ下がるおじさまのおちんぽ、それを見ながら思う。
「さあふたばちゃん、やってみてごらん」
私は今日もおじさまの指名を受け、ベッドルームに入っていた。
前回おじさまが去り際に言った、次はもっと別なことを、との宣言を実行するために。
「は、はい……じゃあ、失礼します……」
ベッドに腰かけ、私に向かって大股を開くおじさま。
既に服を脱ぎ全裸であり、床に座る私の目の高さにそれがある。
私はそのままの姿勢でゆっくりとおじさまの股間へと顔を使づけていく。
「ふたばちゃんの口で、おじさんのを元気にしてほしいな」
それが今日最初のおじさまの命令。
その意味は勿論「舌と口で奉仕」そういう事だ。
前と同じく嗅覚と味覚は感じないようにしてある。
とは言え、他人の、しかも中年のそれを目の当たりにすると微妙な気持ちになるのは仕方がないと思う。
「ちゃんとできたら気持ちのいいご褒美、してあげるからね」
でお、おじさまのその言葉に私のおまんこが疼くのもまた紛れもない事実。
(ご褒美、セックス……女の子の、気持ちいい事……!)
悶々と思い浮かぶ妄想を原動力に、私はおずおずと亀頭に舌を触れさせる。
舌先に感じた感触を言葉にするなら、味のないソーセージ。
これなら大丈夫、と、私は犬のように竿の先っぽをぺろぺろとなめ上げる。
「そうそう、そのまま口に含んで……歯を立てないようにね」
「ん、ふぁい……」
ふにゃと柔らかい竿を舌の上に掬い取って、ゆっくりとそれを口に含む。
歯が触れないよう口を丸くすぼめ、適当に舌の上で転がしていると
「く……!」
そんなおじさまの声と共に、私の口の中のおちんぽがびくっと跳ねた。
「んう!?」
そして一瞬ごとに力強い脈動が私の唇を震わせ、おちんぽがどんどん熱を帯びていくのが分かる。
ふにゃふにゃだったそれがどんどん硬さと太さを増していく。
(大きくなってる、私の口の中で……勃起してる……!)
「ほらふたばちゃん、舌を休めない……お、ふっ!」
おじさまの言葉が早いか、私はそっとおちんぽの裏側あたりを刺激していた。
きっとそれが良かったんだろう、おじさまが切羽詰まった表情になり、おちんぽは一層張り詰める。
(なんだか、これはこれで面白いかも……?)
私の舌のちょっとした動き、それだけでおじさまが悶絶する様子。
この前、さんざん犯され喘がされ鳴かされた私の姿が重なり、今はおじさまを虐めれる、と意趣返しをしたくなってきてしまう。
「む、う……ふあ、ちゅう、ん、ふ……じゅう」
頭を後ろに引き、舌先に亀頭が乗るくらいのところで裏筋とカリ裏を重点的に舐める。
自分でオナニーするときによく刺激する気持ちの良いところ、その経験を活かし多分ここだろうという所をくにくにと。
「あ、ひ……ふたば、ちゃ……!く!うぁ!」
びくんびくんとおちんちんが跳ね、おじさまの腰が引けるのがなんとも小気味よい。
歯を立てるなとは言われたけど、敢えて歯でカリ首を刺激してやればいよいよやばいらしい。
あんなに余裕たっぷりだったおじさまの顔にその面影はなく、今にも果てそうな感じだった。
「ふっ、たば……ちゃ、く!お!」
鈴口の周りを舐め、そしてその中心にある穴をほじくる様に舌を動かす。
そして、ストローで飲み物を飲むように吸った瞬間
どぷ
と、おじさまの精液が溢れ出した。
「んぅ!?っ……ふ……ふぅ……!」
感触を比較できそうなものが思い浮かばない、温かくぬるぬると粘り気のある液体。
それを喉の奥で受け止める。
危うくえづきそうになるのを必死に抑え込んで、私は呼吸を止めゆっくり心を落ち着けた。
(……飲んじゃったほうが、たぶん良いんだよねこれ……)
精飲という行為があるのは知っているし、男ならその方が嬉しいというのは分かる。
感覚は切ってあるから、無味無臭のとろみのような感触しかない。
これなら……と私は意を決しゆっくり何回かに分けて嚥下していく。
フェラと言う行為自体に、気持ちいいとかそういうのは無い。
けれども、この先私を犯してくれるものに対する奉仕、その行為が否が応でも気分を高めることは確か。
早鐘を打つセクサロイドの心臓が体中に熱を帯びさせ、そして私のおまんこを十分なくらい濡らし疼かせる。
(ああ、はやく、早く欲しい……)
精液を飲もうなんて思ったのも、体を支配する女の情欲のせいに違いなかった。
「ふあ……」
熱病に侵されたような顔も、引き抜かれたおじさまのおちんぽを見る目が濡れている事も、隠す気はまるでなかった。
口の中に出したばかりだと言うのに、もうヘソまで反り返るくらい固さを取り戻しているおちんぽ。
それでぐちゃぐちゃに掻き回される妄想と期待が加速していく。
「おじさまぁ……もう、私、我慢できないんです……」
私は床に這いつくばり、おじさまに向けてお尻を高く上げるポーズを取った。
そして、おまたの真ん中になる女の花びらを両手でくぱと広げ、猫の尻尾を揺らしながらおねだりする。
恥ずかしい、すごく恥ずかしい。
それなのに止まらない、止められない。
「お願いします、私のここ……とろとろおまんこに、おじさまの極太おちんぽ入れて……ください……っ」
さらけ出した穴から溢れる蜜、それが私の太ももに川を作るのに数秒とかからない。
それ程に濡れそぼったおまんこを、これでもか、と見せつけおじさまを誘う。
「おやおや……」
呆れたおじ様の声とベッドから立ち上がる音、細い腰をがっしりと掴む手を感じ確信する。
(ああ来る……おちんちんが来る……!)
「この前の今日だっていうのに、いつの間にそんな淫乱になったのふたばちゃんっ!!」
「ふあぁあぁああああああっ!!」
来た、欲しかったおちんちんが来た!
私はその喜びを絶叫にも似た喘ぎ声をあげる事でおじさまに伝える。
嬉しい、幸せ、こんな快楽を感じられるセクサロイドの体と、おじさまのおちんぽがとても愛おしいと。
「ふたばちゃんはもう少し頑張るかと思ったのに、すぐ快楽堕ちしちゃうなんておじさんがっかりだよ
所詮ふたばちゃんもおまんこセクサロイドに過ぎなかったって事だね!」
「ごめんなさい、ごめんなさぁいっ……でも、でもぉ……あぁ、気持ちよすぎて!我慢、おまんこ我慢できないんですぅ!」
おまんこの一番奥をえぐられ、Gスポットを擦られ、子宮を押し上げるように乱暴に突かれ私の媚肉が悦びに震える。
「淫乱おまんこロイドになったふたばちゃんにはお仕置き必要だね……」
快楽だけを感じ快楽だけを貪っていた私に、ぱぁん!と何かを叩く音とひりつく痛みが与えられた。
叩かれた部分の毛細血管が壊れ血が溜まるじんじんとした痺れ、そこでようやく何をされているか悟った。
「や、やぁ……お尻叩かないで……ひん!ふあぁ!」
間違いを犯した子供を叱りつける様に、おじさまの手が無防備な私のお尻を平手で叩いたのだ。
それも、おちんぽを突き入れるリズムに合わせ、何度も何度も尻肉を震わせる。
「い、痛いっ……いたい、のに、ふあぁ……なんで……こんなぁ、ん!あぁ!」
「流石は淫乱おまんこロイドのふたばちゃんだ、痛いのも好きみたいだね」
「ちがいま……んあ!いんらん、なんかじゃ……ひぃ!」
さらに一層高い音が響き、お尻を震わせる衝撃に私は悶絶する。
しかしその痛みも、蜜壺を突かれる愉悦によってあっと言う間に上書きされ混ざり合う。
そして、きっと真っ赤に腫れているだろう所を優しく撫でられたりするのだからたまらない。
(嘘、嘘ぉ……叩かれたお尻が、お尻が気持ちいい……なんて)
錯覚か、あるいは脳の誤認か、どちらかに違いないはずなのに、叩かれる痛みが快感に、じんじんとした痺れが疼きに置き換えられていく。
「や、あ、あーっ!ぁ、ふあぁぁ……!」
理解できない変化に私はただ乱れる事しかできない。
こんな事をされても感じてしまうのか、と、女の子の底の見えない深みを体感しながら。
でも、それはまだほんの入り口、序の口もいいところだった。
「かひっ!」
空気が漏れるような声をあげて私は硬直する。
おまんことは違う、別の「体の中を抉られる」刺激。
それは強烈な嫌悪感を伴い私の中を吹き荒れた。
「ひっ、そこは!おしりのっ、ひぃっ!」
おじさまの指が無造作に私の後ろの穴、肛門に突っ込まれている。
本来排泄のために使う器官だけに、何かを入れられると言う違和感は圧倒的なもの。
今まで身悶えさせられていた女の悦びが、全て端に追いやられるくらいに。
「大丈夫、淫乱なふたばちゃんならお尻もすぐに良くなるって」
おじさまがそんな私を楽しむかのようにあっけらかんと言う。
でも無理、これは絶対に無理だ。
お尻の穴なんて無理に決まっている。
現に、ぐりぐりと直腸の中をまさぐられても気持ち悪いだけで……。
「ふにゃあっ!」
生理的嫌悪感という盾で幾重にも守りを固めた心、それをを容易く打ち砕くパルスに私はのけぞった。
それは、セクサロイドとか男とか女とかの区別を意味のないものとする欲求。
生物としての本能、排泄欲を満たした時に贈られるご褒美、すなわち生理的な快さ。
産まれた時からずっと心と体に染みつけられたそれに抗う方法なんてあるわけがない。
それを知ってはいたが、ただ能動的に得ようとしていなかっただけなのだ。
「ぃやあ……!だめ、それだめぇ……!」
壊れる、絶対に壊れる、私が壊れる。
まだ辛うじて残っている、お尻に入れられる違和感という名の堤防により、抑止されている性的快楽と言う名の濁流。
それが決壊し、溢れ、生理的快感と混ざり合ったとしたら、私は押し流され飲み込まれ消えてしまうんじゃないか。
そんな漠然とした恐怖に声が震えるのを抑えられない。
「ほら、正直にイきなよふたばちゃん!」
でも、勢いよく抽送されるおじさまの指とおちんちんの前では、私の堤防は紙切れも同然。
あっと言う間に破壊され、目前に迫る真っ白な荒波を前に飲み込まれる以外何ができるだろう。
イっているのかも分からないぐちゃぐちゃになった頭の中で、切れてはいけない何かが切れた。
「あっ、あぁああ!イキ、イっ……きまあ、ああぁぁああ───────っ!」
ぷしゃあああ、と盛大に潮まで吹いて私は悟った。
私の中で何かが終わった事、あるいは別の何かが産まれた事を。
────────────────────────────────
「んぶぅ!ん゛ん゛、んおおおっ!」
ギリギリと私の体を締め上げる縄の痛みにくぐもった喘ぎ声を出す。
その声も噛まされたボールギャグに遮られて、意味のある言葉にはならない。
でも痛いだけじゃない。
おまんことアナルに突っ込まれた極太バイブの振動は、痛みを凌駕する快楽を与えてくれるし、
クリトリスと乳首に付けられたローターも同様だ。
「ふぅん!ぎゅ、ふおぉん!」
天井から吊り下げられた惨めな私。
そこへ主人様が鞭を振るえば、肌に幾筋もの赤い跡が刻まれていく。
お尻をスパンキングされた時に倍する刺激に声にならない声をあげ私は悦ぶ。
おじさまに教えられて……ううん、調教されて以来、思いつくありとあらゆる性的趣向
フェラも、アナルセックスも、緊縛プレイも、浣腸やSM、ピアスですら体験し、相手にするのも一人だけとは限らない。
複数人の輪姦まがいのプレイだってお客様にサービスできるようになっていた。
ベッドルームでのプレイだけではない。
ホールでお客様を誘うときだって、ごくごく自然に、そして最大限に女の武器を使っている。
もう味覚や嗅覚をカットする必要もない、むしろ男の味や匂いがあってこそより昂ると言う事も知った。
抵抗感とかそういった類の感情も一切なく、女であることが自然に振舞えるようになっていた。
だって、うまく誘って指名を受ければ……待っているのは目くるめく官能の時間なのだから。
その瞬間に至るためならば、今の私は多分何だってやる。
例え、それが元の体に影響を与えるような事であっても。
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店のオーナーである「いかにもデキる女性」を具現化したような人を前に、その視線を怯むことなく受け止める。
ここで引くわけにはいかないのだ、私がどれだけ本気かを伝えるためにも。
「……そんなに、この仕事が気に入ったの?」
不意に彼女の表情が緩み、予想しなかった言葉をかけられた。
イエスかノーか、無理なバイトシフト変更のお願いをしに来たのだから、そのどちらかだと思っていたから。
「え、ええ……その、恥ずかしながら……」
いくらセクサロイドの体とは言え風俗は風俗、更に中身は男だ。
なので、どう答えたものか迷ったけれど、結局は自分の思うところを素直に口にするしかない。
「いいのよ、実のところ貴女のような子はそれなりに見てきたから」
そして返された答え、私と同じような子がいるという事実に少しだけ心が軽くなった。
私は週三回のバイトの時間帯でしか見ていないけれど、毎日働いてるっぽい子は結構多くいると感じた。
それが彼女の言う「貴女のような子」の先輩たちなのだろう。
で、肝心かなめなここに来た目的。その答えはどうなったのだろうか。
そこに思い至り、私が口を開こうとしたのだが、それより早く彼女が言葉を紡ぐ。
「ねえふたばさん、毎日来てくれるのならいっそ、正式に採用されてみない?」
それは私にとって、とてつもなく甘美な毒であった。
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正式採用と言えば聞こえはいいものの、いくつもの疑問が出てくるのは当然の事。
思いつく一番の問題は、元の体のケアをどうするのか、という点だ。
これは感覚投入型VRには常に付きまとう課題であり、世間的にも問題視されている。
なにせ、夢中になるあまり元の体が餓死寸前まで行ったとか、ログアウトしたら汚物垂れ流しだったとか、実際に起きた事は枚挙にいとまがない。
オーナーの話の中には、当然その事への言及があった。
特殊な液体で満たされた密閉型のタンクベッド、その中で一種の冷凍睡眠状態となり、生命維持に必要な栄養や排泄物のケアは自動で行われる。
最近実用化されたばかりのそれを使うというのだ。
勿論高価な代物であり、その費用は私の給料から天引きされる事となる。
アルバイト代どころか普通の給料でもとても足りないと思うのだが、その分は正式採用された子にだけ斡旋する高額な仕事を受けてもらい補填するらしい。
それが大まかな内容。
他には、元の体に戻る場合は事前の申請と許可が必要な事、行動の制限、機密厳守の義務、等々。
色々な事を言われたけれど、私にとってはさほど気になるところじゃない。
重要なのは、可能な限り長くセクサロイドふたばの体でいるため、元の体をどう扱うかという一点のみなのだから。
「じゃあ最後に、正確に理解してもらうため敢えて言葉を選ぶけれど」
と、オーナーの声に顔をあげ居住まいを正す。
続く言葉、それは本当であればとても屈辱的で、人としての尊厳を無視する危うさを伴っているもの。
「貴女を正式に雇うのは、セクサロイドの意識部品として、と言う事、認識してね」
でも、それこそ私の願う事、望む事だ。
何の異論も反論も出るものではない。
だから私は首を縦に振る、もう戻れない道に足を踏み入れたことを自覚しながら。
────────────────────────────────
何も見えない真っ暗な闇の中、寝ているのか覚醒しているのかも曖昧な状態で漂う浮遊感に身を任せる。
不安はない、何度も体験している事だから。
やがて差し込む光に導かれるまま、そちらへと向かえば俺から私になれる。
いつもの、そしてある意味最後の事かもしれなかった。
「ん、二週間ぶり……かな」
眩しい真っ白な光が形を変え、メンテナンスルームの壁と天井を映し出す。
この二週間、様々な手続きやら報告やらでセクサロイドとしての仕事をする余裕はなかった。
そのためだろうか、この細い指の感覚すら懐かしく思う。
溜め込まれた陰鬱とした気持ちを払拭するように、私は大きく伸びをして体に意識を馴染ませる。
網膜ディスプレイに流れるシステムログ、そしてセクサロイドの体を操る各種感覚メニュー。
基本的にはアルバイトでのログインと何も変わらない。
ただ一ヶ所、ログアウトの表示が非アクティブ化して選択できなくなっているのを除いて。
「はぁ……♡」
それを確認した途端、ぞくりと背筋を突き上げるものは喜び。
もう自由にこの体から出ることは出来ないという事実、だけど逆に言うのなら、私が望む限りはずっとふたばでいられると言う事。
もっと端的に言うならば、私はセクサロイドに変わってしまった、と例えたっていい。
この銀色の髪も、綺麗な瞳も、豊満な肉体も、女の割れ目も、何もかもが私の物。
そう思えば、歓喜の震えが止まらないのも仕方のない事だった。
「あ、かずはさん……」
メンテナンスルームの前で待っていたのは赤い髪の獣少女、私のサポをしてくれた先輩。
私の姿を確認してその口元が動き、小さく息を吐く仕草が続く。
それだけで何を言おうとしたのか、大体わかってしまった。
「ふたばちゃんもこっち側に来ちゃったかぁ、まったくもう」
多分かずはさんは、私にオーナーの申し出を受けてほしく無かったんだろう。
なにせ、元の体の自由を売ってセクサロイドの生を得る、普通に考えれば常軌を逸した行為だろうから。
でも私はそれを選んだ、かずはさんもそれを分かっている。
「改めて、よろしくねふたばちゃん」
だから、口にする言葉は少なくても私の手を取ってくれたに違いないと思うから。
二人で向かうはいつもの姦しさに包まれたセクサロイドの控室。
そこでいつものように制服に着替え、いつものようにホールへと向かう。
廊下の姿見の前で足を止め、前髪を弄り、全身をくまなくチェックして一番自信のあるポーズをとる。
鏡の中の私はにこりと笑えば準備は万端だ。
先にホールに入ったセクサロイドの子が思い思いの席に着く、私がアルバイトをしていた時のように。
そんな中で私とかずはさん、そして数人の子は入口の通路に整列する。
ここは、正式に採用された子、つまりセクサロイドの体に心を囚われた子だけの特別な場所。
誰も彼もがセクサロイドとして抱かれ、セクサロイドとして扱われる事に幸せを感じる変態さん。
もちろん、私もその中の一人。
倒錯的な連帯感を持って、お互いに目配せし笑い合い、開店と同時に訪れるお客様を迎える。
今日はどんな人にどんな風に可愛がってもらえるんだろう、と期待に胸を躍らせながら元気に口を開くのだ。
「ようこそ!私達セクサロイドのお店ピュア♡マータへ!」
次作はsageずに普通に書いて頂きたいですが笑
できれば特別な仕事というのも読んでみたかったです