3片 「挑戦//協力」
土曜日を能力の探索に使い、今日は日曜日。興奮で眠りは浅かった気はするが、それでも意識はしっかりしてる。
矛先が向かったのは、隣の部屋の撫子さんだ。
こういうのも何だけど、撫子さんと俺は隣同士のセックスフレンドだ。最初はもう少し健全な、普通のお隣同士の関係だったんだけどな。昨日みたいに飲み過ぎた撫子さんを介抱していたら、酔った勢いのままにヤられてしまった訳だ。
お互いにパートナーは居ないので問題はないのだが、付き合っているという訳では無い。体だけが近いお付き合い。お互いの“なんとなく”な気分でヤったりヤられたりする。
…だからこそ撫子さんの乱れている姿を知ってる訳で。
きょ、はげし、っはぁ!
そこっ、かんじ、んふぅ…!
目を閉じれば思い出せてしまう位に感じている撫子さんの姿。アレだけ乱れているのなら、女の快感がどの程度のモノなのか気にならない訳がなかった。
「撫子さん、身体をバラさせてください」
という事で早速突撃。
「…は? みーくん何言ってるの?」
「実はですね?」
怪訝な顔をしている撫子さんに、実演を込めた説明をする。
解り易いように左腕を取り外し、ちょっと気に入った『包帯の左腕』を付けてある程度動かしてみる。
「うぉー、本当に取れてる…。みーくんのこれ、痛くないの?」
「それが全然。こうして別の腕も付けられるわけですからね」
解いた包帯の腕は、撫子さんが持っている“元々あった俺の腕”を確保し、しゅるしゅると俺の元に戻る。
「…で、それを私の体で試してみたいと?」
「はい。後はこの能力を他人に使った時、俺と同じようなことが出来るかの確認です」
「みーくんの歯に衣着せぬ言い方、好きだよ?」
とか言いながら、撫子さんはギリギリと俺の頬を抓っている。痛い。
「…ま、いいか。そのことに関しては私もちょっと気になってたしね」
「助かります。で、どこから行きましょうか」
「んー…、まずはジャブって事で、腕かな?」
撫子さんが右腕を差し出してくる。男の俺とは違う、すらっとした腕だ。肘の部分に手を添えて、能力の発動。
「『分解』発動」
呟くと同時に、ぽろりと撫子さんの肘から先が取れた。
「おぉっ、ホントに取れるんだ!」
「取れますし、こんな事も出来ますよ」
包帯の左腕の先に、撫子さんの腕をくっつける。これで俺は左腕だけ関節が2つあり、しかも両右手という妙な姿になっている。
そっと、撫子さんの右腕で彼女の頬に触れてみる。
「おぉー…、自分の腕の筈なのに、自分の腕じゃない気がする」
「今は俺の腕になってますから。後は…こんなことも」
もう一度発動させ、ぷち、と音がしたような感じで撫子さんの左耳を取り外し、見せた途端、
「たらら~、ららんらん!!」
鼻歌を歌いながら繰り出された撫子さんの左のチョップを、俺は首元でしっかりと受けてしまった。ついでにその勢いで俺の首が落ちた。
「……おぉぉ、私のチョップはとうとう殺人の域に達してしまったのか…!」
「そんな訳ないです。俺が自分で取っただけですから」
「あ、なーんだ」
落ちた俺の首を左の右手で支え、きちんと床に置く。大分低くなった視界は、昨日も見たけど新鮮だ。
すると撫子さんが俺の頭を持ち上げて、近くに寄せ、まじまじと見つめてきた。
「ふーん…、ほんとに首からしっかり取れてるんだね。しかも喋れるし」
そこは本当に不思議だと思う。この能力にかかれば、人体の構造なんて無視しているようなものだ。
「ふむ。……ん? ちょっと待てみーくん」
「なんです?」
「みーくんの身体って、首から離れても動かせるのよね? なのに私は意識が落ちるって、変じゃない?」
「確かにそれは俺も思いましたけど、詳しい事は良く解ってないんですよ。だから撫子さんに協力を頼みに来た訳ですから」
「そう言ってくれるのはとっても有難い、こっちも遠慮しなくて良さそうだし」
という事で、本格的に協力をお願いする事にした。
その為に撫子さんの右腕と左耳を『接続』して、元の形に戻す。
「それじゃ撫子さん、首を落としますよ」
「そこは普通に外すって言ってよ、何その首切り役人みたいな言い方」
反論は聞かずに、撫子さんの首に手を触れて能力を発動、首を取り外した。
その瞬間に撫子さんの意識は落ちて、眠ったような表情になる。体は力が抜けたように倒れそうだったので、その前に支えた。
「撫子さん、撫子さん?」
軽く頬を撫でながら声をかけてみても、一切の反応が無い。ここは先日と変わらないな。
「…さて、と」
ここからがある意味俺の本題だ。テーブルの上に撫子さんの頭を置いて、自分の首元に手を添える。
「『分解』発動」
首を外したら、まだ自由に動く身体を使って、俺の頭を撫子さんの体に乗せた後、
「『接続』発動」
無くなっていた『首から下』の感覚が戻ると同時に、元々の俺の身体が力なく倒れ込み、包帯の左腕も形が崩れる。
「これが、撫子さんの身体なんだ…」
立ち上がって鏡を見ると、俺より少しだけ低い身長と、昨日も感じた大きな胸の感覚。
そして…、癪だけどやや女顔の俺の頭が彼女の体の上に乗っているのが、はっきりと見えた。
4片「女体//堪能」
立ち上がって鏡の前に立ってみる。確か着ているのはボディシャツ、といった物の筈だが…、下に何も着ていない為か一部がこすれてとても気になってくる。
今日が休日とはいえ、気を抜き過ぎじゃなかろうか。
…しかし、しかしだ。
「…これは、やっぱりすごいな…」
胸元を見下ろせば、存在するのは同じ胸の筈なのに、昨日とは確かに違う。男の体に無理矢理くっつけた状態ではない、女体としての胸だ。
手を見ると、当然こちらも俺の物と違う、細い指だ。爪も同じように細く整えられてる。
「これに引っかかれたんだよなぁ…」
数日前の行為の時なんか、酔って激しくシテいた時、背中に爪を立てられてた。その指と爪がここにあって、俺の自由に動かしている。
「ん、…っ」
試しにちょっと舐めてみると、ほんの少しだけ甘い匂いがすると同時に、“少しだけガサっとしたもの”に舐められる感覚が帰ってきた。
傷をなめた時とは違う、繊細な感覚だ。
「んじゃ次は…」
そっと手を胸元に持っていき、掬い上げるように持ち上げる。昨日の時とは少しだけ違う、繊細な持ち方。壊れものをそっと持つような、どこか頼りない感じ。
人差し指の先に触れるのは、胸の先端。何度も揉みしだいた、撫子さんの胸。
「んぅ…!」
先端を抓んでみると、少しだけ爪が当たった。柔らかい痛みと共に甘い疼きが、ゆっくりと胸元からやってくる。
「良いな、これ…。もうちょっと…」
もう少し、もう少し。そんな考えをしながら、指の腹の部分でくりくりと乳首を弄り始める。
その度に喉から漏れそうになる俺の声を抑えながら、女性の胸の快感を味わい続け、感じ続けていく。
「…っ、ん、……、!」
胸元を完全に露出させ、手に余るサイズの乳房を、乱暴になり過ぎない力加減で揉み始める。
乳首を巻き込んで上下に動かしたり、出る筈のない母乳を絞るようにしてみたり。
そうしていく内に、股間の方に不思議な違和感が出てきた。
「…あ、そうか。これが濡れてくるって感覚なんだ…」
男の時の勃起とは違うような、何かがじんわりと漏れ出てくる気配。
股間のクロッチ部分を外して女性器を外気にさらすと、空気に触れて少しだけ冷えた愛液がこぼれ落ちた。
「なんか、この間より多いような気がする…」
指で掬いきれないほどの量を、太ももから拭って見据えると、少しだけ嗅ぎなれた匂い。
クンニをした時に何度も舐めていたそれを、撫子さんの指から舐める。その行動もすべて、俺の意志で行っている。
背徳感のような、いけない事をしているような、少しだけ複雑な感覚と共に、甘露のように愛液を舐めとり飲み込んだ。
「…これだけ濡れてれば、もう大丈夫かな?」
早くなる鼓動を抑えるように、呼吸を深く整えながら指先を股間に持っていく。濡れた秘所に指を当てると、それだけで背筋をゾクゾクとしたものが駆け上がってきた。
「ふぁ…!」
指を挿入させると、どうにか抑えていた声がどうしても出てくる。
意識しないで締め付けてくる膣内と、指先の合わせ技で殊更強く「女の快感」を感じていく。
「こんなに、気持ちいいんだ…」
差し入れた指を動かす毎に、男としてのオナニーとは全然違う快感が身体を突き抜ける。
ぷちゅ、ぴちゅと愛液の弾ける水音が僅かに聞こえる度に、男の俺が女の快感を味わっている、という背徳感が重なって、さらに動きを早めていく。
「は、は…! ここ、クリが…、さっきより大きく…」
人差し指の付け根辺りに、大きくなってきたクリトリスの感覚が、それを何乗にも強くした。
手持無沙汰の左手は胸をまた掴んで、クリと同じように大きくなった乳首を抓む。
それぞれが異なる、けれど強い性感をもたらすその二カ所を好奇心から同時にいじった瞬間、
「あっ、あ…、っあーー!!」
加減も知らずにフルスロットルでオナニーしていた結果は、当然の絶頂。
男の声のままだというのに、俺はだらしなく大声を上げて、エクスタシーの荒波に意識が呑まれていった。
ゴン!!
「お゛っ!? お゛おぉぉぉぉ……!」
が、その後がいけなかった。絶頂の勢いで仰け反っていた所、重心の変わった体でバランスが取れるはずもなく、したたかに後頭部をぶつけてしまった。
「…あー痛かった…」
さっきの絶頂なんて知らぬと言わんばかりにもだえ苦しむこと暫し。こぶが出来た場所を擦りながら体を起こして、改めて自分の状態を鏡で見た。
…乱れている。ボディシャツの胸元は開かれておっぱいが丸見えで、乳首は未だ立っている。
股間の方はクロッチ部分が前に垂れる事で辛うじて見えないだけだが、腿には確かに愛液がこぼれているのが見えている。
「ホントに、撫子さんの身体でヤったんだ…」
後頭部の強打という水入りはあったけど、さっきの絶頂と、手や胸や股間から残ってる疼きが、殊更にそれを実感させた。
「ふ、ふふふふ…!」
同時に笑いがあふれ出てくる。実験の結果が満足いくこともあったし、これで出来る事にも大きく幅が出来そうだ。
こうなると次の欲望は、色んな人の、それも女性の身体を試してみたくなった事だ。
…だがその前に、まずは撫子さんの首をどうにかしいないといけない。
いや、別に消したりするわけじゃないよ?