19片「潜伏//銭湯」
ちょっと時間は経過する。
一週間ほど普通に学校に通う事を止めて、銀の湯の番台としてしばらく過ごしていた。
勿論体は、本来の番台である近衛さんの物、顔も髪も交換して、記憶も貰うことで成り済ましは完璧に行えた。
すらっとしたモデル体形な為自分の体にしても楽しいし、前に撫子さんがヤってた事で処女で無い事も知ったので、楽しむことは何も問題無い。
何よりここは人がそれなりに集まり、比較的閉鎖空間だという事。
「今日も頼むよ、藤香ちゃん?」
「はいはい、こちらこそどうもご贔屓に」
スケベそうなニヤケ面で、50代くらいの親父が代金を置いてくる。ピッタリ400円。相場としてはやや安めだろう。
手持ち金庫の中に代金をちゃんと入れて蓋をすると、その間に親父は男湯の脱衣所の方へと進んでいた。
(…こんなサービスやってくれてるおかげで、助かるっちゃ助かるんだけどね)
「背流し中」という小さな立て看板と、入浴料入れとシールの貼られたの透明な貯金箱を番台に置いて、俺も男湯側の方に向かう。
いわゆる常連さんへの、別料金を必要とするサービスなわけで、体を洗ったりしてあげる訳だ。性的な行為は無しで一回1000円で後払いと、まぁ安い方だろう。
その分この、近衛藤花という女性は自分をその値段で売っている訳だけど。
ショートパンツとTシャツ姿になり、男湯の方に向かう。ボディタオルも石鹸も、相手側が用意してくれてる物を使って、体を洗っていく。
「おーい藤花ちゃん、こっちもお願いできるかい?」
「少し待っててくださいねー。まずは仲代さんが先ですから」
すでに中に入っていた別の客が俺を呼ぶけど、先ほど代金を払った50代くらいの親父こと仲代さんの背中を洗い始める。
近衛さんの記憶を使って、この人が気持ちいいと感じる程度の力加減で背中を擦り、肩を揉んでいく。
「あ、あ~…、やっぱり藤花ちゃんの手は良いねぇ…」
「どう、いたしまして…!」
凝り固まった肩を解すように、結構力を入れる。勿論、その間に『接続』しての洗脳は忘れない。
揉みほぐしでは接触時間が長くない為、『分解』と『接続』のタイミングはむずかしかったけど、3日ほども経てば大分慣れてきた。同時に行える洗脳も少しずつになるけれど、こうして常連が来て、いつものように近衛さんに頼んでくれると、さほどその時間は気にならなくなってくる。
習慣のようにここに来て、俺に『接続』されて、気付かぬ内に俺の一部になりつつある。
「…よしっ、どうですか仲代さん?」
「あぁ、気持ち良かったよ藤花ちゃん。…それでだね? 延長もして欲しいんだが…」
「はいはい、承りましたよ。けど他に陣場さんも待ってるから、後でお願いしますね」
肩越しから覗く、仲代の勃起した男性器を見て、まぁいつも通りかと考える。
単純に背中を流すだけなら1000円。性的な事も含めてそれ以上をするのなら、さらに2000円。こういうのも何だけど、泡風呂と考えてもめちゃくちゃ安い。
どれだけ自分を安売りしたいんだと考えているのだけど、まぁ本人がこれで良いと思ってるんだからこれで良いんだ。
あ、仲代とヤった所はカットするよ。親父とヤる所なんて、俺としてもあんまり覚えていたくないし思い出したくも無い。
勿論、男側への洗脳だけじゃない。
女性側への餞別も忘れずに行っている。
人気の少ない時に話をしている相手に目を付けて、相手の緊張が解けてきた所で適当な理由を付けてボディタッチをし、『接続』。記憶を覗かせてもらう。
大丈夫だろうと勝手に考えた相手には、色々と楽しませてもらっている。俺の身体と記憶を使って、代わりに学校に行っている元・近衛さんが戻ってきて、ちんこを返してもらう事で何人も抱いてみた。
「俺」を組み敷いて、女として俺のちんこを味わうことだってしてみた。
男湯に「俺」を通して、その場で性的なサービス込の揉みほぐしを、お互い裸で行ったりね。
当然だけど閉店後だよ?
「ん…、そう、もっと突いて…、そこ…!」
「はい…! 近衛さんの中も、やっぱり良い…!」
「んふふ…、普段シてる撫子さんと、どっちの方が良いかしら」
「そん、な…、どっちも気持ち良くて、甲乙つけがたいね…!」
俺の身体を組み敷いた「俺」が、湯船の中、正常位で激しく腰を打ち付けてくる。
女の体での感じ方になるが、甲乙つけがたいのは本当だ。撫子さんのようなとろけ具合と、近衛さんの絞まり具合はどちらがいいかと問われれば答えに窮する。
水中で勢いが少しだけ殺された「俺」のちんこが、俺の物になった近衛さんの膣に叩き付けられ、その度に水面が揺れる。
「あん、そ、そうだよ、「みーくん」、もっと奥、んっ、そこぉ…!」
「はい…! 近衛さん、中に出しても良いですよね? 普段から、こんなサービスしてるんですから!」
「うん、うん…。ほら、「みーくん」が一番気持ちいい所で出して?」
体を寄せ、抱きつきながら「俺」の首元を舐める。互いの心臓の音が激しく成り合い、同期していく。
「出ます…、出ますよ…! んっ!」
「っふ、んうぅぅ……!」
押し広げられた膣内に、お湯とは違う熱が注ぎ込まれ、気持ち良さに身震いする。膣内で痙攣するちんこが、2度3度と精液を吐き出して、俺の胎内を満たしていった。
「はぁ…。…それじゃ次は、攻守交替だよ、近衛さん?」
「え? あ、うん…」
湯船から上がり、「俺」の体を今度は俺が組み敷く。互いの性器に手を当てて『分解』し、ちんこがぽろり、まんこがずるりと取れた。
それをお互いの股間に交換して『接続』すると、交換した体の性器だけが、元の持ち主の所に戻ってきた。
一度出してもギンギンに勃起しているちんこを、今度は俺が挿入する側にまわる。
「ふぁ、あぁぁぁ…!」
「んふ、ん…! やっぱり、近衛さんのまんこはこっち側で味わうのも、いいなぁ…」
「うん…、今度はこっちに、私に、俺の精液いっぱい出して…!」
性器を交換された時をトリガーに、近衛さん本来の人格が表に出てくるように施した洗脳は、すっかり上手くいっている。
「俺」の姿で女を刺激されて、男の声で女の快感を感じていても、彼女は何も疑問に思わない。俺の一部として、全身で快感を受け止めている。
「はぁ…、俺の出した精液が、中でこんなになってる…。気持ち良かったんだね、近衛さん?」
「うん…、うん…! だ、って、私の中が、こんなに気持ち良かったんだもん…!」
膣内のぬめりは俺の動きを円滑にして、ただ濡れている時より早く俺を、先ほど達し損ねていた近衛さんも同様に、絶頂に押し上げていく。
「出る…、出すよ、近衛さん!」
「はん、んっ、っふぁぁぁ!」
2度目の射精を、今度は彼女に叩き付けた。
20片「性交//遊行」
「最近みーくんが私を抱いてくんない」
「はぁ…、まぁ確かに。最近ご無沙汰でしたしね」
近衛さんの姿のまま、撫子さんの家に戻る。少しばかり離れているけれど、そこは近衛さんが免許と車を持っていたから問題なく移動が出来た。
難点は他に駐車スペースが無い事なので、有料駐車場に停めて戻ってきた。
「という事で、抱きなさいみーくん?」
「またいきなりですけど…、…飲んでますね撫子さん」
「あーたぼぅよー! 引っ越しで色々飲む間無かったから溜まってんのじゃーい!」
酒気を匂わせながら、俺の方に寄り掛かってくる彼女の体は、力が抜けてるのもあって重い。こんな事言ったらぶっ叩かれるけど。
「ちょっと撫子さん、いくら近衛さんの体がシッカリしてるからって、いきなり寄り掛かると…!」
「んぁー、何だよみーくーん。綺麗な姿になったからって調子に乗んなよー?」
「わ、った、ちょっとぉ!」
リミッターが外れてるおかげで、酔った彼女に難なく引っ張られてしまう。玄関のすぐ前にある二階に引っ張られていくが、躓かないように歩くのが精一杯だ。
そのまま二階にある三部屋の内、俺と撫子さん用の大きな8帖の部屋、そこに設置したダブルベッドに放り投げられた。
「っと…、ホントにするつもりなんですね」
「そりゃぁーねぇー? みーくんがそんな見た目でおっ勃ててたら、やらざるをえんでしょうよ」
確かに近衛さんの体のまま、股間には俺のちんこを持ってるとそうなるかもしれない。
現にちんこは、出番はまだ終わりじゃないと言わんばかりに、元気にジーンズの前を膨らませている。
「んーっひっひ、久しぶりのみーくんのちんこ…。はむ、んぢゅる…!」
「ふぁ…! いきな、り…!」
ジッパーを降ろし、ショーツの中からはみ出ていたちんこをまろび出させると、撫子さんは何の躊躇も無く咥え始めた。
撫子さんにフェラをされるのもしばらくぶりの感じがして、とても気持ちいい。彼女の口の中で俺のちんこがなおも元気になり、しっかりと勃起した。
その下に戻した近衛さんのまんこも、それに応える様にじわりと愛液が零れ始めてくる。
「…お? 何だいみーくん、上下合わせてのハイブリッドにしたのかい? 好きだねぇ」
ショーツごとズボンを完全にズリ下げ、下半身を露出させられる。元気に役目を果たそうとする二つの性器が、撫子さんの目にさらされた。
「そりゃ、こっちの方が両方気持ちいいからね。撫子さんも好きでしょう?」
「そいつぁ確かに。せんずりと指マン同時は、意識飛ぶ位良いからね」
撫子さんも自分のパジャマを脱ぎつつ、下着を降ろす。準備していたからか、そこからは既に女の匂いがしている。
「でも今は、みーくんに抱かれたいからこっちが…、ん、っふぅ、んぅぅ…!」
対面座位になって、撫子さんが俺のちんこを自分のまんこにインサートさせる。俺の記憶の中で最も慣れた、最初の女性の膣内。
すっかり俺のモノに添うような形になった膣が、俺のちんこを優しいような、激しいような感覚で包み込んでくる。
「はぁ、ん~…! あ、やっぱり撫子さんのが、一番安心できる…」
「嬉しい事言うねぇみーくんは。ほーらほら、私のまんこは気持ちいいかー?」
「そうでなきゃ、こんなに元気になりませんよ…!」
目の前で笑う撫子さんの顔をじっと見つめながら、体を寄せ合う。ブラジャーの布越しとはいえ、二人の乳房が重なり合って、互いの柔らかさを伝えあってくる。
少し体を揺すると、その感覚だけでまたちんこが元気になり、膣内を押し広げようとするのだ。
「ん、ちゅ、ん…!」
自分から腰を動かし始める撫子さんと、その動きに合わせて揺れる、俺と彼女の4つの乳房。でも撫子さんの方が大きくて、ぶるんぶるんと揺れている。
胸に手を添え背を曲げて、乳頭を揃えて口の中に含む。
「うぉっほぅ!? み、みーくん欲張りだね…!?」
「ほぅへもひなひゃ、おふぁえひえひまひぇんふぁらうぇ?」
痛くないように歯を立て、吸いながら俺の方でも腰を振る。濡れそぼった下半身同士と、子供じゃやらない同時授乳で、撫子さんの体を愛していく。
「も、もーぅ、お返ししちゃうぞー?」
「むひぃっ!」
「んぉっ!」
フリーになっていた俺の胸を、撫子さんが摘まんできた。ちょっと手加減を忘れたような勢いの抓りに、痛みと同時に感じる甘い疼きが俺を苛む。
強く感じてしまい、強く噛んだ乳首は、俺の感覚とわずかにずれて撫子さんに“された事”を返していく。
「み、みーくんやるね…! んじゃこっちもだ!」
「んうぅぅ!」
彼女の右手が結合部のさらに下、俺の体についてるまんこに触れる。欲しいと言わんばかりに涎を垂らしていて、そこに触れられた事に喜びの水音を上げた。
いつの間にか俺が後ろに倒れ、撫子さんの騎乗位になる。俺は口を離して両手で乳房を愛撫し、撫子さんは右手で俺の膣、左手で俺の胸を弄ってくる。
「っふぁ、んっ、やっぱり女性の体でも、みーくんだ…。私の中で、ビクビクしてる…!」
「んぁ、撫子さん…、出ちゃいます、中に出しますよ…?」
「おっしゃバッチこーい!」
乳頭と陰核、同時にぎゅ、っと抓まれて、脳を焼くような快感が頭を走ると同時に、
「いっ、っんくぅぅぅ!!」
「んぁ、っはぁぁぁ!!」
堰を切って吐き出された俺の精液が、撫子さんの子宮を叩いて絶頂の返礼を行った。多分、今日の中で一番射精したと思う位に、どくどくと流し込んでいる。
「あー、幸せー…」
「そう言ってくれてありがたいですね…」
繋がり合ったまま、俺と撫子さんは一つのベッドで寝ている。アレから何度も注いで、逆に俺が注がれて、何時間も体を重ね合った。
「…ね、みーくん?」
「何で、む…」
「ん、ぢゅ…、ちゅ…」
呼ばれた事に応えようとしたら、唇が重ねられた。今までどちらともなく行わなかった、恋人同士のようなキス。
体だけの関係と考えていたからこそ、していなかったけれど。それが、初めて行われた。
「…ん、ふ、ちゅ…」
「ちゅぱ、ん、ちゅ…」
けれど不思議と悪い気はしなくて、唾液も舌も絡め合い、互いの口内を愛撫していく。
「ぷぁ…。…ね、みーくん?」
「何です?」
「みーくんが本気じゃなくても良いけど、私はみーくんにだけは本気だから、そこん所忘れないようにね?」
耳朶を噛むように、そっと囁かれる言葉。それが本音かどうかは解らないけれど、確かに言ってくれた。
「…はい、撫子さん、大事にしてあげます」
「んふふ…。みーくん大好きー…」
寝言のように力を失っていった言葉を最後に、撫子さんは寝に入った。果たして彼女は寝ぼけていたのだろうか。
でも、それでも良い。
不思議と撫子さんにだけは、『接続』からの洗脳しようとは思わなかった。今はそう、考えていた。