増１１片「捧愛／／受愛」
「みーくんたっだいまー！」
撫子さんの声が家の中に響いたのを感じ出迎えると、玄関に立っているのは彼女一人だけだった。
「あれ、皆はどうしたんです？」
「んー、今日は私たち２人だけにしてほしいって頼んだのさ。
そしたら全員納得してくれたんで、今は藤花ちゃんの所にお泊りだよ」
なるほど。察してくれたのか、それとも撫子さんが伝えたのか。それは解らないが、今確実な事は、この家に居るのは俺達だけという事になる。
「んじゃー…、えへへ。邪魔されずにいっぱいシようぜ、みーくん？」
スカートの上からでも解る位に剛直を屹立させて、撫子さんが笑いかけてくる。
待ちきれないとばかりに靴を脱いで俺に抱き付きあうと、柔らかい女同士の体が触れ合った。
「んむー…、ちゅ、ちゅむ、んふ…」
「はむ、ちゅ、っふぅ…」
どちらからともなく唇を重ね合い、お互いの舌を貪っていく。撫子さんの手が俺の尻を掴み、自分の方へ抱き寄せようとするたびに、その股間にある千草ちゃんの物だったちんこが俺の体に押し付けられていく。
初めての体でアレを入れられるのかと思うと、怖いと思う楽しみな感覚も大いに存在している。
「玄関でするのも良いんですけど、ちゃんとベッドに行きません？」
「そだね、変な事が最初だと後々飽きるもんね」
それをいまさら言うのかと内心思うけれど、気にしない事にした。体を変え続けていけば、きっと飽きる事は無いと思っているからだ。
「えいっ」
「わっ！ …撫子さん、いきなりはナシですよ」
俺達の自室に着くと、何度も交わったベッドに押し倒された。覆い被さるように俺の上に乗っかってくる彼女は、女性らしからぬ笑みが浮かんでいる。
「良いでしょ、今日の昼間からずっとお預けなんだもん。
みーくんの新しい体にぶち込みたくてたまらなかったんだから、部屋に来るまで我慢したことも褒めてくれたって良いじゃん？」
先ほどからずっと勃起し続けており、重力によって垂れ落ちたスカートでも存在を主張してくるちんこ。それを掴んでなお主張させ、俺の目に見せつけてくる。
「でしたらいっぱいシてあげますから、お互い脱ぎましょう？」
「おう！」
シャツもズボンも脱ぎ、下着姿になる。この体用に誂えたブラジャーも、出来る限り扇情的になるよう考えて買いはした。そのおかげか、撫子さんは先ほどからこちらをガン見している。
「……」
更にそれを煽るよう、しなを作るよう、艶めかしい動きをしながら後ろのホックを外し、肩ひもを外して胸を晒す。
「……」
撫子さんは息を荒くしながら俺の行動を注視している。ショーツのゴムを伸ばそうとする程元気なちんこは、もうすっかり隠れる事をやめていた。
「まずは一度、胸でしてあげましょうか？」
「うん！ もう辛抱たまんない！」
胸を寄せながら訪ねてみると、撫子さんは勃起ちんこを俺の目の前に突き出してきた。興奮した男の臭いが、俺の女の体を内側から刺激してくる。
そっと熱い剛直を挟み、唾液を絡ませながらしごき上げていく。
「はぁ、んっぅ…！ 新しいみーくんの肌、すっごいすべすべ…！」
「そりゃ若い子から貰ってきましたし。ん、熱い…」
先端から溢れる先走りを少しだけ吸い、胸でしごくたびに撫子さんが身悶える。それと同時に彼女の股間から、男とは別の女の臭いも溢れてきた。
「おぉ、っふ、んぅ…！ はぁ…、なんか今日、いつものみーくんと違う感じ…！」
「ちゅぷ、も、ぅ…。色々、仕入れてきてますからね？」
事務所で貰って来た記憶の中に、フェラのやり方もあった。今日になるまで少し封印していた物を、この体と一緒にお披露目するつもりだったのだから。
…しかし最近、舌も物足りなくなってきた。後で変えてみようと考えながらも、貰ったものと俺が得ていたフェラテクを混ぜ合わせ、亀頭や裏筋を入念に責めていく。
「うぉ、っほぉぅ…！ みーくん、出るぅ、ぶちまけるよ…おっ、ふぅ！」
撫子さんのちんこがひときわ大きく膨らんで、鈴口から精液がほとばしった。蓄えられた白濁液が、咥えていた俺の口の中に注ぎ込まれる。
「ん…、ん～…！！」
ぶるぶると小刻みに体を震わせながら、撫子さんが射精の余韻に浸っている。まだ出てくるもの、尿道に残った物を残さないように吸い上げ、俺は精液を飲み込んでいく。
「じゅ、んぢゅ…、んぐ、ん…っ」
「っは～、ぁ～…。みーくん、いつも精液飲むよね？ そんな事しなくても良いのに」
「え？ …えぇまぁ、前は服とかに痕跡残したくなかったんで」
唐突に聞かれた事に、こちらも思っていた事を返す。
…そりゃ乙木達にヤられていた時は、口の中が精液臭くなる事には耐えられなかったが、服が汚されるよりはましだと思っていたからだ。
「でも今は…、ちゃんと受け止めてあげたいと思っているから飲んでるんです。その分、女の体も悦びますからね」
今となっては、理由はこうなっている。撫子さんが俺を受け入れてくれたこと。それが嬉しくて、俺も出来る限り彼女を受け止めてあげたいと、そう思っているから。
何であれ、俺も彼女を受け止めてあげたい。たとえどんな事が、この先に待っていたとしてもだ。
「……みーくーん！！」
「ふわっ！？」
なんだか感極まった様子で、突然撫子さんが俺に抱き付いてきた。
「あーもー！ みーくん大好き！」
肩甲骨まで伸びている髪を振り乱しながら、動物の様に顔をこすりつけてきた。
「どうしたでんすか撫子さん、そんないきなり…」
「いきなりじゃないよ。私はみーくんの全部が好きなの。
いじめに耐えていた悔しい顔が好き、それでも負けないよう歯を食いしばって作ってた顔が好き。
不思議な能力に驚いて好きに使う所が好き、でもちゃんと私に教えてくれる義理堅さが好き。
私を信じてついてきてくれる所が好き、たまに見せてくれるいじらしさが好き。
その体を私の為に用意してくれる所が好き、自分の為に動ける所が好き。
みーくんの良い所も悪い所も、全部全部好き」
体を押し付け、胸同士を押し付けて、耳元で囁かれている。その言葉は嬉しさに溢れていて、柔らかさ越しに伝わる鼓動が真実を伝えてくれる。
応えるように撫子さんの体を抱き寄せ、微笑む。
抑えていた想いは、もう隠さなくていいんだと思いながら。
「俺もです。ずっと撫子さんと一緒に居て、ようやく好きだっていう感情が分かりました。
受け止めてくれて、示してくれて、受け入れてくれて、甘えさせてくれて。
最初は体だけの関係だったけど、次第に撫子さんが好きになっていきました」
言葉にしていく度に鼓動が大きくなり、俺の想いも伝えてくれる。
「…両思いだったね、私達。自分一人だけの考えだと思ってたよ」
「他人を信じていいのか、ずっと解らなかったんです。ですけど、撫子さんの前だったらって思うと、自然とそんな気分も消えてしまいましたよ」
「いいのいいの。私だって最初は、みーくんの事を一夜限りの関係だって思ってたから。
でも違ったね、どっちからでもなくまたエッチなことし合って、いっぱい肌を重ねたんだもん」
「えぇ。撫子さんとの最初は酒の勢いでしたけど、それでも気持ちよかったんです。誰かと触れ合う事が純粋に気持ちよかったっていう事を、ちゃんと教えてくれだんですから」
「おぉう。っていう事は私、スレてたみーくんを更生させられたってこと？」
「はい、お酒の勢いがありましたけど」
「…なんかみーくん、ずいぶんその事引きずってない？」
「そりゃ引きずりますよ、あんな事されちゃぁね」
最初に撫子さんと肌を合わせた時、彼女はリミッターの外れた体で思い切り押し倒してきたのだから。
…まぁそれでも、乱暴にされたのは最初の一発だけ。二発目からは快感からどんどんとこちらに主導権を渡してきた事で、次第に可愛さを見せてきたのだ。
全部終わった後にリバースされた記憶もあったりしたけどね。
「みーくん根に持つー。あの時は翌日にゴメンしたから良いでしょ？」
「えぇもう良いんです。でも最初がアレでしたから、中々忘れられなくて」
少し頬を膨らませている撫子さんを落ち着かせるよう体を撫でながら、ピロートークは続く。互いに落ち着いてしまいそうになる心音は、接触している体による興奮で次第に上がっていく。
どちらからともなく早鐘を打ち始める心臓は、血流を早くして、体を興奮させていった。
「…ね、みーくん」
「どうしました？」
「…続き、シよ？」
「えぇ、勿論」
撫子さんのちんこがまた勃ち上がり、俺の腹部を撫でてくる。はき出した精液も舐めた俺の唾液も乾いており、新しい先走りで腹部を濡らしていく。
触れ合っていた体を離し、仰向けになり、新品まんこをぴろ、と割り開き見せつける。
「今度は口の中じゃなくて…、こっちに下さい。この体の初めては、撫子さんの物ですから」
「…っ」
唾を嚥下する音が聞こえた。もう何度もしている筈なのに、「童貞です」と言わんばかりの態度を丸出しにしながら撫子さんは俺のまんこをじっと見つめている。
「い、いいの…？ 私初物食べるの初めてだから、痛くしちゃうかもしれないよ…？」
「良いんですよ。この体は、その為に用意したんですから」
留まる事が出来なくなった愛液が垂れ落ち、お尻を濡らす。自分の胸の間から見える撫子さんのちんこは、俺と抱き合っていた時より硬く大きくなっているように見える。
「そ、それじゃ、挿れちゃうよ…？」
「どうぞ…」
挿入の手順は解っている筈だ。先端を入口に触れさせると温度が伝わり、ん、と声が漏れる。
「ほわぁ、キツ…、あったか…！」
弛緩した撫子さんの声と同時に、ずぶ、ずぶ、とゆっくり挿入されるちんこ。膣内の圧迫感を感じながらも、俺は彼女の腰に足を絡めて逃げられないようにする。
「あ、中に何か引っかかるものが…、ねぇみーくん、これって……」
「良いですから、一気に来てください…！」
「う、ん…！！」
ぐんと腰が突き出され、閊える様に侵入を押し留めようとしていた処女膜が破られる。
「あぐ…っ、…っふ、ぅ……！」
何度目かの破瓜の痛みは慣れないけれど、それでも呼吸を繰り返し、痛みをやり過ごそうとする。
「はぁ…、あん…！ ふぅ…、みーくん、みーくん…！」
全身で抱き付いて、動きたい欲求を抑えてくれる撫子さんの表情はとても切なげで、痛みにかすむ頭の中でも、とてもかわいく見えてしまっていて。
「はむ…、んちゅ…」
「む、んむぅ…！」
胸の先端をこすり合わせながら、撫子さんの頭を掴み、キスをする。唾液を絡めながら繋がりあい、吐息が混じり合う距離で、能力なんか使わずに１つになっていて。
「あ、ヤバ。っふぉう！」
気が抜けてしまったのか、注意が唇に行ってしまったのか。キスの余韻をぶち壊すように、子宮口と鈴口が触れあっている俺の胎内で、奥へめがけて精液が注ぎ込まれた。
「おぉぅ…！ んっ、うぇ…っ。えへへ…、出ちった」
ぶるりと震えながら残ってる精液を注ぎ込み、笑っている撫子さんの姿を見つつ思う事はいくつかあった。けれどその中で一番大きかったのは、
「…しょうがないですね、撫子さんは」
半ば諦めに似たような、ちょっとした溜息。
「ご、ごめんみーくん！ 挿入った段階でメッチャ気持ちよくって…、我慢しようと思ったんだけど、ね？
キスまでしてもらったらそっちに気が行っちゃって…、出ちゃった…」
「良いんですよ、いつもの事ですから」
「ホント…？」
慌てて体を離そうとした彼女をもう一度抱きしめ、耳元で囁く。こればっかりは本当だ、いつも俺は彼女に振り回されている。最初だって、今だって。
そしてそれ以上に彼女に救われているのだから、こんな事位何でもないと思えているのだ。
「えぇ。なので、気にしないでください。ね？」
「うぉ、ぅ！」
けれどまぁ、それはそれ、これはこれということで。四肢で彼女の体を包み込んだ状態で、横に回転する。先ほどまでは俺が下になっていたが、今度は撫子さんが下になる。
言ってしまえば騎乗位だ。彼女の未だ屹立しているちんこが、俺の膣を大きく押し広げてくる。
「ん、は、ぁ…。やっぱり大きい、この体位だと深く入ってくる…」
「え、えーと、みーくん？ つかぬ事を伺いますが、この体位はどういったつもりかな？」
「解りませんか、撫子さん？ 今度は俺の番ですよ」
隙間なんて殆どない膣内、大きいちんこを騎乗位で扱き上げていく。痛みと圧迫感がまだ残るけれど、それでも段々と気持ちよくなっていくのだから、人間の体はよく出来ている。
「あっん、っふぅ、おっきぃ…！ さっきより、何でこんなに固いんですか…！」
「みーくん、みーくん…！ あーっ！ 凄い、腰、抜けそう…！」
血と愛液の混じった撫子さんの精液を、抽送と同時にごぼごぼ掻き出しながら、お互い持っている筈の無かった性感を貪りあう。
女として男の剛直を包み込み、体内を征服されるような荒々しさと、胎内に命のような熱を注ぎ込まれる感覚を俺は味わう。
男として女の柔肉の中に入り込み、体を内側から侵食されていく悦びと、その内側に自らを刻み込ませる征服感を撫子さんは味わう。
本来知る由も無かったそのどちらも、今ではお互い当然のように、けれど不思議な新鮮さを伴って、また俺達は感じている。
「ふぅーっ、んふー！ っはむ！ っちゅっちゅ、んぢゅぅ！」
「っひゃう！ そんな、胸もぉ…！」
横たえていた体を急に起こし、撫子さんは揺れるだけだった俺のおっぱいに乱暴にむしゃぶりついてきた。決して小さくない胸は、俺の動きに合わせて動いていたけれど、それを見過ごす彼女ではなかったのだろう。
「だったら、こっちは…」
「っんひ！ みーく、んぅぅ…！ そっちズルいよぉ！」
胸を突き出しながら腕を後ろに回し、ちんこの裏に隠れている撫子さんのまんこへ指を突き入れる。そこは既に隠す事が出来ない位に濡れており、俺の指をすんなりと、けれどキツく締め上げようとしていた。
「ズルいも、ズルくないも、無いですよ…！ だって…、ひゃうん！」
「んむぅ、むぅ…！ みーくん、おっぱい、みーくん、ちんちん…！」
「こんなに、気持ちよさそうじゃないですか…！」
胸もまんこも貪られる俺は女として、男女両方の性器を責められる撫子さんはありえない快楽を具え持っている者として、その体に持たされた命の営みがもたらす悦びを享受し合っている。
「出る…、みーくん、また出るぅ…！」
「は、い…。俺も、イけそうです…！」
「は…、ふぁ、えぅ…！」
「…もう、そんなにだらしない顔をしちゃって…！」
俺の目を見つめながら、快楽に蕩けた顔で撫子さんはねだってくる。だから、ちゃんとしてあげるのだ。
涎のたれそうな程に開いた口めがけて、俺の唇をかぶせてあげる。それと同時に、
「ん～～～～ッ！！」
「…………ッ！！」
再び胎内に注がれる撫子さんの白濁と同時に、絶頂の感覚が脊髄に迸った。消し飛びそうになる程強い快感をか細い正気で繋ぎ止めながら、広げられた彼女の口の中へお返しとばかりに唾液を注ぎ込んであげた。
「んっ、くぅ…、ふぁ…、みーくぅん…」
「撫子、さん…」
射精してもなお固くそそり立つちんこは、膨らんだ子宮から精液が出る事を拒むように栓をし続けている。隙間を埋めるかのように、精液はどくんどくんと注ぎ込まれ続けており、じんわりと内側から広がる幸せが俺の体を満たしている。
俺と言う存在を受け止めてくれた彼女。その愛に報いたいと思い、少しでも応えられるように受け入れる。
この能力を得て、撫子さんと体を重ねて、女の体になって、悦びを骨の髄まで知って、心の底から良かったと思えている。
射精後の脱力感で弱弱しく抱き付いてくる彼女に応える様に、男の人を抱きしめる女性のように、俺は撫子さんの頭をそっと抱きしめた。
増終片「継接／／心裏」
「実はみーくんに能力をあげたのは私だったのです」
「…は？」
俺と撫子さんが想いを交わし合ってから、一月が経過したある日。唐突に「今から、私の言う３つの嘘の中に真実が１つあります」と言われて切り出されたのが、これである。
「そして私はみーくんの子供を妊娠していて現在３週目です」
「…残り１つは？」
「もし私が悪魔でも、恋人でいてくれますか！？」
「何で最後は疑問形なんですか」
２人の自室内、俺用の机で宿題をやっている最中に言われた事は、あまりにもくだらない事だと思った。
隠すほどの事でもないが、何を隠そう俺と撫子さんの関係はあんまり変わっていない。あれからちょっと変わったことと言えば、俺の顔と身体が少し増えた位だ。
「で、みーくん。私が言った事の中で真実はどれだと思う？」
どれかと言われても、さてどれなのだろうか。
ペンを置き、教科書とノートを閉じ、机の上に胸を乗せる。勉強中に大きな胸にするのは邪魔だなと、今更ながらに思い知るので、桂木さんの体から今日持ってきたおっぱいを『分解』する。
「どうせ意地悪問題でしょう？ だから、“３つの嘘”という言葉が真実です」
「ほぉう？ 根拠を聞いても良いかな？」
「一番最後のは疑問形ですから、まず他人に吐く嘘じゃないですよね。これは違います。
あと言われなくても恋人です。たまに俺の別の体をダッチワイフ代わりにしてても恋人ですとも、えぇ」
「わーいみーくんちょっと辛辣ー♪ で、次は？」
「絶対妊娠してませんよね。最近ずっと、俺が撫子さんにされっぱなしですから」
実は最近、俺のちんこは菫ちゃんや胡桃ちゃんに対してばかり使用している。アレから撫子さん相手だと、俺は女役しかしてないのだ。３週間前？ 絶対シてない。
「…あーはーはー、ごめんねみーくん。今度はちゃんと元々の性別でシようねー？」
「そのつもりです。…で、最後なんですけど…。能力をあげたにしては、その理由が見えないんですよね。
十中八九“面白そうだから”とか言いそうなんですけど、撫子さんがそういう家系とかじゃない事って、実はもう興信所使って調査済みなんですよ」
「うっそマジ！？ どこでそれ知ったの！？」
「『銀の湯』で得た人脈の中にあったので、一応今繋がりある人間全員調べてもらいました。…まぁ、人生いろいろあって疑り深くなってたものですから」
実家の事ながら、あの元・人間達がやってくれた事は随分深く根を張っていた物だ。洗脳して好きに用いる事はしていても、今でも他人を信頼しきることは、ほとんど出来ていない。
「結局全部嘘しか無かったじゃないですか。だから、真実があるならそこしか無かったんです」
撫子さんの目をじっと見ながら答えると、彼女はオーバーリアクションをしながらベッドに倒れ込んだ。
「ば～れ～た～か～。見抜かれちゃったんならしょうがないね、ちゃんと答えられた人にはご褒美上げないとね！」
両手を広げて、撫子さんは笑顔で俺を迎え入れようとしている。今日は千草ちゃんにちんこを返している日だからか、パジャマの股間部分は膨らんでいない。
「さ、どうぞ！」
「あのですね撫子さん、俺まだ宿題の途中なんですけど…」
「明日やれば良いよ、間に合うよ！」
「教育実習終わったからって適当言いますね」
彼女の実習が終わり、俺の高校からいなくなっても、お互いの勉強は終わらない。撫子さんだってレポートがある（けど終わってる）し、まだ俺もやることがある。
…とは言え、
「…仕方ないですね。今日は撫子さんの誘惑に乗ってあげますよ」
「そんな事言いながら、いつも乗ってるくせに♪」
席を立ってベッドの上に乗り、両手を広げている彼女の懐に入り込む。
ぎゅぅと抱きしめ合えば、お互いの体の柔らかさを十分に堪能出来て、いつまでもこの状態でいたくなる。行為をする訳では無いが、この状態は本当に落ち着くわけで、彼女への信頼が知らぬうちに高くなっていたのだと、痛感する。
だから、撫子さんのように宣言したわけではないけど、俺も嘘をついた。
興信所なんて嘘だ。相手へ『接続』してしまえば、俺の意志でその人間の裏の裏まで見えるし理解できてしまう。
人面獣心や面従腹背なんて解りきってしまうからこそ、『接続』能力で相手の事を書き換えてしまえるからこそ、逆に何も信じられなくなっていくから。
（…結局、俺は醜い人間だよな）
心の底では理解している。自分が下衆で悪辣で、いくら真面目ぶろうとしても無理な、心のどこかで壊れてしまっている人間である事なんて。
『接続』で撫子さんの体を自分の体として使い、『分解』で外した彼女の頭を抱える様に撫でながら、誰にも聞かれないよう自嘲の笑みを漏らしてしまう。
先ほどまでヤっていて、未だ子宮内に残る自分の精液の感触を確かめながら、俺は考える。
継ぎ接ぎ、その本質を一言で表すのなら「歪」だろう。
違うものを繋ぎ合わせて作り上げた寄せ集めを、どうにか見れるようにしただけ。最初から完成している物には成れず、到達することは永遠にないだろう。
元よりいいものが出来る、なんて俺は思っていないし、思えるようになれない。
内心で自分を嫌いながら、覆い被せる様に他の物を継いで接いで見え無くしていくけれど、結局俺の根底部分は変わってない。
自分を覆い隠し別物に変えてしまうようなこの能力だって、きっとそんな歪んだ性根だから使えたんだろう。由来は解らないが、きっとそうだと、するべきじゃない確信を抱く。
我ながら唾棄したくなるようなこの性根に、少しだけ決別しよう。
「『接続』発動」
撫子さんの頭へと繋がり、そして一つの願いを彼女の奥底に刻む。
ずっと俺から離れないように？ 違う。
俺のすべてを受け入れる様に？ 違う。
何もかも忘れて離れるように？ 違う。
俺が撫子さんに望むこと。それは、
『俺に対しては正直であってほしい』
それは命令じゃない、ただのお願い。
本音を伝えてくれる彼女には、俺に向けることへの嘘を吐いてほしくなかった。
そうしてもらう事で、俺のこの内心の卑屈さを、ほんの少しでもどうにかできると思いたかったから。
撫子さんの頭を、俺本来の体に『接続』する。
「ん、ん～？ どうしたのさみーくん、私の体使っちゃって」
「特に深い理由は無いですよ。好きな人の体は、触れていたいじゃないですか」
「んー、…ん。確かにそうだね。みーくんの体は、ぁ…っ！」
訝しげに悩んだ撫子さんは、納得した瞬間に股間のちんこへと伸びる。気持ちよくなっているのが、屹立していく事で丸わかりだ。
「というか真っ先にそこですか、撫子さんが考える俺の体って」
「だってねぇ、ここが私のよく知るみーくんの体なんだもん。気持ちよくしてよくされて、好きなみーくんの、さらに好きな部分だもん」
にっこりと笑いながら、俺の体を使って俺を押し倒す。増設させた筋力では、当然のことながら撫子さんの体じゃ抗いようがない。
けれど良いんだ、こうされることは嫌いじゃないし、何よりお互い「まだ足りない」と思っていたから。
「みーくん、ねぇ、もうちょっとシよ…？」
「はい、もっと出してください、撫子さん…」
女の撫子さんがちんこを使い、男の俺がまんこで犯される。
歪の筈で、しかし俺達の間では何も間違ってない行為。
腰を叩きつけられ、胸を揉まれ、男として女として高まりあい、注ぎ込まれる。
すっかりまんこで憶えてしまった俺のちんこ、そして精液の熱さは、嘘なんてつけずに絶頂へと押しやられてしまった。
疲労から意識が飛んでしまいそうになっている状態で、体を交換したままベッドに並んで俺達は寝ている。
「…大丈夫だよみーくん、あんな事しなくても、私はみーくんから離れないからね」
「ひゃ、う…！」
胸を吸われ、消え始めていた官能の火をまた灯されそうになりつつも、俺は彼女の言葉の真意を問わずにゆっくりと意識を手放した。