支援図書館(ζ)

Patchworker 1片~12片

2016/06/22 18:28:20
最終更新
サイズ
52.41KB
ページ数
6
閲覧数
23623
評価数
1/40
POINT
1790
Rate
8.85

分類タグ

1片 「分解//接続」

「取れてしまった」
目の前には頭、胸、腕、腰、脚と7つに分解されてしまった女性。
「違うんだ」
口から零れたのは誰に言うでもない弁解の言。
「確かに昔から分解することが好きだったけど、それはちょっとした玩具とかだから良かったのであって。
人間なんて「分解」できてたまるかって話だよ。どこの猟奇殺人鬼だよ」
こんな事態になったのも、今朝起きる直前に見た夢の所為だ。
脳が覚醒して目が開くまでの数秒間を延々と無駄に引き延ばされて形成されたようなあの夢が、本当の事だなんて思うはずないじゃないか。

『お前は分解するのが好きだったな』
そうだけどお前は誰だよ。
『という事でお前の手に「分解」能力を与えた』
あとは「溶解」と「理解」で三解にでもなれって?
『勿論そのままでは困るので「接続」能力も与える』
聞こうよ人の話を。
『使い方は体に教えておいた』
説明を放棄するんじゃぁない。責任果たそうぜ。
『では起きると良い』
待てコラァ!!

目が覚めて、突然の出来事に脳の処理が追いついていない時、携帯にメールが入った。
画面を見ると、「のみすぎた」 とだけ書かれている。
差出人は隣に住んでる一人暮らしの年上女性、日浦撫子さんで、同じく1人暮らししている俺にたびたびちょっかいをかけてくる人でもあった。
仕方あるまい、放置して寝ゲロによる窒息死などされては夢見が悪い。適当に処理をしてから休日を満喫するとしよう、と考えながら、借りていた隣室の合鍵を使い部屋に入る。当然酒臭い。
部屋の構造は同じアパートなので解っているから、奥へと進むと、いたよ酔っぱらいが
「うげぇ…、ぎぼぢわるい…」
それはもう見事に乱れた姿で、足元に大量のビンやら缶やら。何時から飲んでたんだこの人。
無事を確認しようと軽く叩くため、体に触れた途端、
「あろ?」
といった間抜けな声を出して、彼女は7つに分解された。

話は冒頭に戻る。
「……」
さあどうしたものだか。
撫子さんだが今は眠ったように目を閉じている。揺すっても叩いてもヘドバンさせても目が覚めやしない。
仕方ないので上半身を持ち、抱えて胸を揉んでみる。うん、前の酔っぱらっていた時に押し倒した記憶と同じものだ。違いは反応してくれるか否か。
Dカップは伊達ではない揉み応えだ、ふむ。
「…まさかな。『分解』発動」
ふとした疑問を確かめるように、胸を揉んだまま、意図的に能力を発動させてみると、撫子さんの上半身からおっぱいだけがポロリと取れた。手の中でお椀のような形のまま、ぷるぷる震えている。
悪ふざけのように、もう一つの能力を確かめてみよう。
「…『接続』発動」
分解された胸の面同士を繋げて、二つ目の能力を宣言してみると、これも出来てしまった。他に存在するなら見せてみろと言わんばかりの、おっぱいボールだ。

「おぉ、おぉぉ…」
どうやら夢で見たのは本当だったようだ。分解と接続、二つの能力が存在して、俺はそれをある程度自在に扱える。
「……」
夢のような能力を前に、一つの欲望が鎌首をもたげてきた。
上着を脱いで、おっぱいボールを元の二つに『分解』する。両手に一つずつ持ったおっぱいを俺の胸に宛がって、深呼吸の後に呟いた。
「『接続』発動」
瞬間、胸から“掴まれている”感覚が伝わり、慌てて手を放す。すると解放されたおっぱいが、俺の胸にくっついたまま離れずに残っていた。
「おぉ…、まさか本当に成功するとは…」
わずかに変わった重心に引っ張られないよう、もう一度胸を手で支える。下に向けて存在していた胸の重みが僅かに和らぐと同時に、確かに存在するのが“触られている”感触。
指に吸いついてくるような柔らかさを持ったおっぱいが、俺の胸にある。

「……」
生唾を飲む音がいやに大きく聞こえたと思う。そんな思考を遮ったのは、撫子さんが掛けていた目覚まし時計の音。
「…今はこれを堪能してる場合でもないな」
ちょっとした落胆を感じながら、俺の胸から撫子さんのおっぱいを『分解』して服を着る、その後撫子さんの体をすべて元通りに『接続』。
その上で彼女に声をかけると、
「……お、お゛おぉう゛、…あだまいだぃ…」
どやら何もなかったかのように動き始めてきた。
放置も出来ないし、呼ばれた手前軽く面倒を見ておこう。
詳しい事は絵的にもアレなので省略。

あ、吐いた。


2片 「興味//試行」

まさかアレが本物だとは思わなかった。撫子さんの体がバラバラになるまで寝ぼけていた頭は、アレで一気に冴え渡った。
となると、これがどれ程の事が出来るのか試してみたくなる。
何ができるか、を知る為には仕様書というものがよく付いているが、この能力にはそんなものは一切ない。何が出来て何が出来ないか。それを知る為にも行動はしないといけない訳で。
「さて」
目の前には、とりあえず適当にかき集めた自室の道具が諸々。後は、
「…これが俺の体にも適応されるかだ。『分解』」
左手首に右手を当てて、能力の発動を意識すると、まるで当然だと言わんばかりに左手が取れた。
おぉ…、さっきの『接続』もそうだったが、『分解』も自分に適応されるのか。

「次は、だ…」
さっきのおっぱいで、生身同士がくっつくことが確認されたわけだが、今度は生身と道具がくっつくかだ。
アイロンを手に取り、左手の切断面に添えて『接続』してみると、さっきまで消えていた「左手」の感覚が戻って来た。左手というには変な形ではあるが…。
ここから先に何ができるのか、と考えていると、左手が熱を帯び始めていた。
「ん? まさか…」
右手をアイロンの底部分に近づけてみると、アイロンのスイッチは「切」になっているのに、確かに発熱しているのが触れなくても解った。というか触れたら火傷しそうだ。
干している洗濯物を一個だけハンガーから取り外して、発熱しているアイロンを当ててみる。勝手が違うから少しだけもたついたが、それでもしっかりと服のしわは取れていた。
「…なるほどな」

アイロンを皮切りに、他にもいろいろな道具を体の先につけていったことで、色々な事が解ってきた。
主なところでは、5つ。
一つ目。体に『接続』した道具は、文字通り体の一部になって自在に動かせる。
二つ目。電源やガスといったパワーソースは要らない。
三つ目。道具本来の重量は無視され、「元々そこにあったパーツの重量」程度の重さになる。
四つ目。新しい部分を『接続』しなければ、俺本来の体のパーツは自由に動かせる。
五つ目。パーツを複数『接続』させることで、体の延長が可能。
後は、これを他人に使った場合にどうなるかだが…。
とりあえずは「首を体から取り外したら、眠ったように動かなくなる」ことだけは解っている。
これは俺自身に適応されるかと問われたら、NOだ。
人生終わりになるかもな、と考えて首を外してみたら、別の何かにくっつけない限り首から下の体は自由に動かせたのだ。

それに反して難点も一つ。
この能力の発動には、“俺の手”で対象に触れないと効果が発揮しないという事。この“俺の手”というのは結構あいまいで、「体にくっついている手」でなくても良かったりする。
元々の腕であったり、今体にくっついている手でもいいのだ。
例えば、包帯のような長い布を縒り合せて腕を作ったとしよう。この包帯の腕で他人に触れても、これをつける為に外した俺本来の腕でも、能力の使用は問題なく行えた。
相手に直接触れなければ発動できない、というのは難点だが、それでも応用は効きそうだ。
「…………」
ここまで1人でどれだけできるかを試してみたが、内心で思ったのは一つだった。
「面白そうだな、これ…」

次第に考えていく事は、自分一人で満足できなくなってきた事。
当然だ、この能力を楽しむためにはパーツが足りない。人間でも何かの道具でも、俺の部屋の中にある物だけでは少なすぎる。
そして、俺の中で一つの欲望がむくむくと大きくなってきた。
撫子さんの胸を使ったあの感覚。アレがもし胸だけでなく、全身だったのなら…。
そう、俺の体全部が女の物になったなら…、楽しそうじゃないか。
「だけど1人から全部を取るのは問題だな…。パーツを全部俺が確保したら人が一人消える事になる。
何か俺のパーツと交換して…、でも複数のパーツは欲しいから…、持っていくならパーツだけ? 残った人の体は…、むむ…」
いくらか考えてもまとまらない頭は、今日の試行錯誤による疲労により眠気を訴える。
「仕方ない、明日また考えよう。…この能力は逃げやしないからな」
風呂に入った後、コーヒーカップの取っ手や、目覚まし時計のボタンを付けたり外したりしながら、明日以降の楽しみを噛みしめるようにベッドにもぐりこんだ。

コメントは最後のページに表示されます。