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Patchworker 13片~24片

2016/06/22 19:11:07
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13片「記憶//記録」

近衛さんの体を綺麗にし、撫子さんの時の記憶によれば「頭が外れていた時の記憶」は無いようで、とりあえず銭湯を出る時には元通りにしておいた。
本人はどうにも違和感に悩まされていたようだが、少しだけ訝しんだけど俺達を見送ってくれた。
「うーん…」
「どうしたの、みーくん?」
撫子さんの持ち家に戻る最中、車の中で少し悩んでいた俺に、彼女が問いかける。
「いえね、乙木達をどうしようかな、って…」
「え? パーツだけ取ってサヨナラしちゃえば良いんじゃないの?」
「それは勿論考えましたよ、考えましたけど…」
一番最初は、体は貰う、頭は歯も含めて可能な限りパーツを『分解』させて海にでも投棄するつもりだった。
肉は魚が処理してくれるし、運悪く頭蓋骨が見つかっても歯が無いので歯形から調べようもない。難点はDNA鑑定になるけどね。
「7人が一斉に学校に来ないまま失踪したら、どうしても騒ぎになるよな、と思いましてね…」
「あー…、そりゃ確かに。一応私の立場としても困るね、それ」

できる事なら、1人ずつじっくり減らすか…、もしくは…。
「あらかじめ失踪の宣言でもしてから消えるんなら、もう少し気が楽なのにね」
「それでも余程の事が無い限り、家族が探さない訳ないでしょう」
「なんだよね。いっそ消す人の代役をみーくんがやって、それとなく消えそうな感じを演出するとか」
「それは…、…問題はまだありますけど良いですね、解決できるならそうしましょうか」
突然いなくなるのだから大事になるのであって、徐々にその気配を臭わせてから消えれば、知ってる人間から見れば「あぁそうか」という事になるだろう。
知人や親族たちが警察に届けを出す可能性も大いにあるが、それでも前触れなく消えるよりかは自然だ。発見されずに一定期間が経てば死亡扱いになるらしいし。
けれど問題と言うのは、バラバラにしてやっても石の下からミミズのようにはい出てくる。
俺が失踪する人物に成り済ますのは特に問題ないんだが、そこでもう1つ。記憶やクセといった、その人間が持ってるアレやコレだ。
俺の能力はある程度汎用性はあるけれど、物質的な物に限られている。脳を取る事は…、出来ない訳では無いだろうが、海馬部分を取って俺に付け替えれば確かに変えられるだろう。俺の記憶はなくなるに等しい行為だが。

「問題ねぇ…」
撫子さんが、俺達の住んでいるアパートに車を停めて降りる。あの家を拠点にする為、着替えなどの日用品を取りに戻ってきたのだ。
「えぇ、成り済ます為には必要な事ですよ。…記憶っていう大問題があります」
「どうにかする方法とか、みーくんは考えてある?」
「構想でしかありませんけどね。ちょっと必要な物取ってきます」
「んー。私も色々取ってくるから、急がなくても良いよー」
互いの部屋に入る前に、手を振って応える。とりあえず適当なボストンバッグに、着替えと歯ブラシ等をまず突っ込む。
さらに教科書とノート、ノートパソコンと充電用コード、A-AタイプのUSBケーブルと、さらに外付けHDDを入れ、体操服を別の袋に入れる。
これで問題なく機能するかだが…。まずは実験だ。
ノートPCにUSBケーブルを接続し、もう片方のコードをこめかみに当てて『接続』する。頭に直結されたPCは、俺の意志によって起動する。…ここまでは良し。
「次は、だ…」
脳内でカーソルを動かすイメージをすると、画面に映っているカーソルも合わせて動き始める。
ブラウザを起動し、動画サイトを開き、適当な動画を流しながら別のアプリを開く。

動画編集ソフトを開き、「ファイルを開く」を選択。外部接続されている「俺の頭」フォルダの中から、今日やっていた「銀の湯」での行為を読み込む。
少しだけ頭の中を探られるような、むず痒い感覚と共に読み込みが進む。終わり、映り始めたのは「女のオナニーをしている、鏡に映った迫間の身体をしている俺の姿」。
カーソルを動かしてスクロールバーを進めると、すべて俺の視点ではあるが確かに銭湯で行っていた行為が映っていた。
「…出力は問題無し。次は…」
動画を保存し、ソフトを消す。流しっぱなしの動画サイトからは、投稿者が色々とやってみた事の動画が映っている。
おすすめ動画の中から適当に選択し、それを再生せずに別サイトを使ってPC上に保存する。
コピーし、「俺の頭」フォルダの中に張り付ける。すると今度は脳内に、無作為に選んだはずの見た事の無い映像が、知りもしない記憶として思い出せてしまう。
そしてこれが本物なのかどうか。動画サイトの「再生」を押して、実際に流し始めると、
「…やっぱりだ」
記憶の中にある動画と、全く同じ動画が画面に映し出されていた。
そのまま「俺の頭」フォルダの中にあった記憶内の動画ファイルを消すと、抜け落ちたようにどうしても思い出せなくなった。
「これなら出来るかな…」
能力の思っていた以上の汎用性に、不意に笑いが止まらなくなりそうだった。

『おーいみーくーん? 準備できたー? 下で待ってるねー』
「おっと、撫子さんはもう終わったのか。こっちも早く終わらせないと」
思い返せば俺は迫間の身体だし、あまり「俺」の家に長居し過ぎるのもまずい。適当に物を詰め込み、毛布と枕を持って撫子さんの待つ駐車場へ向かう。
…筋力の関係で、男の時の感覚のままに持とうとしたら、持ちあげるのに大分時間がかかったけどね。
「みーくん遅いー。女の体になったからって、準備まで女の子と同じにならなくてもいいのに」
「ちょっと実験してたのもありましてね…。成り済まし、問題無いかもしれません」
「お、ホント? 後で聞かせてくれる?」
「勿論。まずはあそこに戻りましょう、体だけの連中を随分と待たせてますからね」
「あいよー」
荷物を車に乗せて、あの家へと戻る。道すがら撫子さんに説明しながら考える事は…、まずは誰の記憶を貰おうか、ということ。
これなら使い方次第で記憶を貰うし、書き換える事も出来る筈だ。
(あぁ…、なんだか随分と悪人になってきてる気がする…)
撫子さんに悟られないよう、内心で笑みを浮かべていた。


14片「偽装//変装」

一夜明けて、学校。
「ねぇ、放課後ちょっと良いかしら」
「え…、都築さん、俺に何か用?」
「簡単なことよ。校舎裏で話がしたいの。待ってなさい。じゃあね」
俺は目の前で呆けた顔をしている「俺」に声をかけて、今の体の元の人物の席に座る。
「どうしたのよ、あんな奴に声かけて。…昨日何かあった?」
「何もないわよ。今日はアイツと日直だから、忘れないように声をかけてただけ」
「ふぅん、それなら良いんだけど」
つまらなそうな顔をしながら、桂木は自分の席に戻っていった。本来の俺なら、こうして桂木が声をかけてくることなんて滅多にない。そして彼女が声をかけたのが、自分の取り巻きではない別人であることも気付かない。
何故か? 今の俺は、昨日体を使わなかった都築の身体と顔で学校の授業を受けているからだ。
胸の重量感をさほど感じない、軽い胸。存在感を主張するような大きさの尻は、椅子との接地面を増やして安定性が高い。
(先日に試した記憶の書き換えは、意外と上手くいったな…)
教師が来るまで携帯を適当にいじりながら、昨日寝る前にやったことを思い出す。

「そんな方法があったんだ。みーくんの能力はホントに色々できるねぇ」
「俺も出来るんだって、さっき知りました。…さすがに全員分の吸出しは時間がかかるかな」
自分の身体と顔のパーツを戻し、すっかり身体を洗って綺麗になっていた7人分の体にちゃんと服を着せて、男にはちんこも戻し、それぞれに自らの頭を持たせている。
それぞれの頭にケーブルを『接続』させ、まずは全員に「今日は7人で遊び、何事もなく家に帰った」という旨を書き込んで、送信。
次に、今日は身体を使っていない都築の頭に、能力関連の事柄を消した「俺の記憶」をコピーして貼り付ける。勿論都築自身の記憶は、ポータブルHDDの中にコピーした。
そして俺の頭の中に、「俺の記憶」フォルダとは別に「都築の記憶」を作って張り付ける。
「……う、ん、うん、良し、解るぞ…」
混乱する頭を振って記憶を手繰り寄せると、都築本人の記憶が流れ込んでくる。
記憶は意識の切り替えしなくても引き出せるようで、そこに苦労はない。ただし喋り方などは、都築の記憶を用いないとどうしても不自然な物になってくる。
だけどこれで、他人への成り済ましはおそらく可能になるだろう。
そこから俺と都築は、首から下、顔、髪のパーツを交換してお互いを「別人」にし合い、その後に解放。俺は都築の家へと「帰宅」した。
何もなければ各自家に戻り、また翌日に学校に来るはずだ。

結論から言えばその目論見は成功して、都築は「俺」として学校に登校していた。
こっちは先日二度目の風呂などからやっぱりムラムラしてしまい、入浴後に都築の荷物を漁り、いつもの道具でオナニーをしたり。
(いやぁ、都築はお尻好きだとはね…。いつもの習慣から、つい綺麗にしちゃったし)
女性器を使っての自慰より、お尻を使った方が感じやすい事は驚いた。いざしてみると、感じ慣れていたからか心理的な抵抗をすり抜けて、後ろの行為は気持ち良かった訳だけど。
そうこうしている間に教師が入室し、朝のホームルームが始まる。
特に違和感が無い気もするが、ここからは『都築』の記憶や意識をメインに使っていかないと、どこでボロが出るか解らない。
気を張りそうだけど、どこか違う生活は新鮮さに溢れている。
どうせだから女同士の会話、というのも楽しんでみようかな。
たとえそれが、俺本人をディスる会話だったとしても。

時間は経過して放課後。
日直の仕事を終わらせて、トイレに行くと言って「俺」を先行させていた。当然嘘ではなく、男の時より我慢の効かない膀胱をスッキリさせる為に、トイレに向かう。
意識を俺の物に戻すと、都築の携帯を使うと後々面倒だからという理由で、中古の本体と格安SIMカードで作った入れ替え時用携帯を取り出す。これで撫子さんに、無料通話アプリで連絡を取る。
『今そっちに「俺」が向かいます』
『おいえー。みーくんは?』
『トイレです』
『ゆっくり来て良いよ』
『そのつもりです』
『愉しむぜえへへ』
何をするのかと言えば、撫子さん主導のシチュエーションプレイだ。教育実習生が放課後、生徒と関係を結ぶという遊び。なのだが、今の都築は体も記憶も「俺」のモノだから、その行為に関しては違和感なく受け入れるだろう。
スカートとパンツを脱いで便座に座り、ゆっくりと股間の力を緩めると、股座からお小水が流れていく。
「はぁ…」
男の時とは違う感覚で、尿が体内を通る。新鮮な感覚だが難点はその後垂れてくるという事か。
股間を拭いて、パンツを穿いて立ち上がる。校舎裏に行くまでにもう少し時間はかかるだろう。その時の為に、軽く準備をしておくか。
(ん…)
撫子さんの身体を使い、俺の身体と致した時。迫間の身体を使って自慰をした時。二つの記憶を思い出しながら、少しずつ身体を興奮させて校舎裏に向かった。

「んっ、そ、そう『みーくん』、もっと突いて…!」
「は、はい、撫子さん…!」
「おっぱいも気持ち、いぃん…!」
「は、は…ッ!」
校舎裏に赴くと、思っていた通りに「俺」と撫子さんが行為に勤しんでいた。校舎の壁に手を付いて、立ちバックで事に勤しんでいる。
(そっか、 俺って別人の視点から見るとこんな事してるのか…)
外から眺める情事にちょっとした興味をそそられていると、どうやらフィニッシュを迎えたようで、二人の結合部から「俺」の出した精液が零れ出している。
「はぁ…、…ん? おーい」
「へ? ……え、都築さん? もう来ちゃったんですか?」
「えぇ。そのおかげで随分と良い物を見れた訳だけど、これどうしようかしら」
ふたりの行為を録った動画を見せながら考えたふりをすると、撫子さんが「俺」に小さく耳打ちした。内容は先日打ち合わせした通り、
『襲って口封じしちゃえ』
「…そうですね、撫子さん、手伝ってください」
「あたぼうよ!」
2人だからと気を良くしたのか、我ながら現金な行動をしている「俺」。勿論そういう行動をとる事を、予め刷り込んである。
「俺」に襲われるという、ある意味初めての体験だから、抵抗はほどほどにしておいた。組伏せてくる撫子さんの顔の楽しそうなこと。後で仕返ししてやる。

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