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Patchworker Build

2019/10/01 16:25:16
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B1片 「意識//潜伏」

…最近、何か妙だという感覚が付きまとっている。
いつも通りに起きて学校に行くだけという話なのに、何かがおかしい。

寝起きで広がっていたり、視界に入ってくる髪の毛は、いつもの事の筈なのに妙に煩わしさがあるし。
ブラジャーをつけるのは垂れてくるのが嫌だから、という理由があるのは理解しているが、不思議と着けるのに手間取ってしまう。
そもそもこんなに胸が大きかったっけ?という疑問だって、何故か頭の中に浮かんでは消えていく。
ショーツだってそうだ。ピッタリくっつく穿き心地には、どういったことか違和感がある。本当はもっと、ここに何かあったような…。

鏡を前にして、どうしても晴れない疑問を解消しようとうんうん唸っていると、姉さんからの声が聞こえてきた。
父親の海外出張に母親が着いていき、姉弟二人で住む家は広いと思うが、1か月も経つとだんだんと慣れていくのは解る。
この違和感も次第に慣れていき、不思議と思うことは無くなるのかなと考えながら支度をする。

髪の毛を梳いて大きめの三つ編みにし、制服を着ていく。
……視線を下ろすと存在を主張する胸に、どうしても目が行ってしまう。柔らかそうだな、柔らかいんだよなぁ。
ブラウスを閉めようとする手を止めて、胸の上に手を置く。ブラ越しに感触だけど、やっぱり柔らかい。

「ちょっと恵、まだなの?」

部屋のドアがいきなり開いて、姉さん、将也が入ってきた。

「朝ごはん冷めちゃうんだけど、着替え終わるの遅く…、ははぁん、なるほど」
「ちょっと待てよ姉さん、いきなり入ってくるなって!」
「良いのよ別に。起き抜けだもんね、恵だって気になっちゃうわよね」

何を納得してるのか知らないが、将也はにやにやと笑ってる。
俺より身長は低いのに、体に見合わない位にその体格は“男性”になりつつある。二次性徴を迎えてどんどんと体が変わっていくのだろう。
だというのに気にした様子もなく、すっかりキツそうなスーツを着て、俺より先に出かける支度を済ませている。

「程々にしときなさいよ? 男の体ってイったら虚脱感すごいんだから。冷めた朝ごはん食べたくないでしょ?」
「わかってるってば。着替えるんだから早く出て行けよな?」
「はいはい。早くしなさいよ? “俺”も待ってるんだから」

そう言って将也は出ていった。まったくもぅ。
水を差されてしまったけど、確かにこれ以上違和感を追及してる暇はなさそうだ。仕方なしに制服に袖を通す。
…それにしても、ズボンの丈が合ってないよな。それにお尻回りだって妙にキツいし、ベルトをキッチリしめないと腰のあたりがブカブカになるし。
後で将也と制服の買い替えについて相談しないと。出費増えちゃうなぁ。


着替え終わってリビングに向かうと、そこには既に将也と“俺”が席についていた。

「やぁ恵くん、おはよう」
「おはよう、“俺”。将也もおはよう」
「はいおはよう。それじゃ朝ごはん、食べましょうか」

いただきます、の号令を受けて朝食が始まった。
“俺”は会話に困った時の父親みたいに、しきりに将也や俺に状況を聞いてくる。
最近将也には彼女が出来たとか言うけど、“俺”は嬉しそうにそれを聞いてる。俺だって彼氏位欲しいけど、同級生の連中がどうにも子供っぽく見えて仕方ない。
部活の先輩だってそうだ。最近はホモかと思う位俺の体ばっかり見てきてくる。そんな事が続くと女生徒との方が話が合うような気さえしてくる。

「大人の方と付き合ってみたい?」
「それも良いかなぁ。…彼氏は欲しいけど、学校の相手だとそんな気分になれないかも」
「だったら、帰ってきたら俺が付き合ってあげようか?」
「何言ってんだよ“俺”ってば。…まぁ、考えておくけどさ」

くすくす笑いながら、“俺”はボディラインを撫でるように見せつけてくる。
男の筈なのに柔らかそうなおっぱいとか、頼めば揉ませてくれるのかな…。俺のおっぱいとどっちが柔らかいだろう。
そんな事を考えると、不思議なことにズボンの中がじゅん、と濡れてしまうような感じがしてしまった。

* * *

将也・恵姉弟がそれぞれ会社と学校に出かけるのを見送り、実験は問題ないなと考える。
今回2人に行ったことは単純だ。

2人とも“俺”に洗脳、プラス意識の『交換』をした。
これによって姉・恵は自分の事を弟・将也と認識して中学校に向かい、弟・将也は自分を姉・恵として認識し会社に向かった。
別にそれだけの事なら何の問題もない。脳の『交換』といったことでもできるけど、正直周りのアフターケアに奔走する未来しか見えなかった。

けれど最近、また能力が変化してきた…というか強化されてきたみたいだ。
どうにも俺が触れたり能力の対象にしてきた相手やその周囲には、「された事」への違和感を認識していない様子だった。

これを使うことによって、首を挿げ替えた相手は大体「首の人間」として扱われる。
無機物を乗せれば、体がいくら人間であったとしても周りの人間は無機物として扱わなくなったり、という具合だ。

今回は意識のみの『交換』で、社会的にはどっちに主眼が置かれているか、という疑問であったが、なるほど納得。「意識」の方が優先されている感じか。
意識>首>体、という優先具合を確かめながら、彼らの両親の私室を開ける。

そこにはベッドランプを頭にした彼らの父親と、化粧バッグを頭にした彼らの母親の姿があった。
勿論、これを認識できるのは俺と撫子さんだけだけど、ね。


B2片「周囲//認識」

今回のように能力の対象にされた人間が、周囲からも「そうである」よう扱われるようになったことに気付いたのは、「銀の湯」に入っていた時だ。
母親と一緒に入ってきた5歳くらいの子供がいて、他に人がいなかったこともあって戯れ気味に2人の頭を挿げ替えてみた事に端を発している。

2人は何の異変もなかった、と言わんばかりに、子供の体に乗せた母親が、母親の体の子供の手を引いて風呂場に向かっていく姿だった。

「……いや、ダメだろ」

最初に出てきたのはこんな言葉だったりもした。
いやだってさ、今までの経験からして『分解』されたり『接続』されたりした側は違和感を覚えながら少しずつ馴染んだり馴染めなかったりするのが良いんじゃん。
そのお陰で千草ちゃんなんか、銀の湯の看板娘になってるんだし。もうすっかり女として抱かれることに拒否感なんか示さない立派な女の子なんだし。
なんだかつまらないなと思いながら、先程の親子の首をもう一度挿げ替え、ようとしてちょっと考えた。

俺の能力は使っていく事で変化していった。顕著なのが、『分解』と『接続』が『交換』に発展した事だろう。
今回発言してしまった「認識」問題も、ある程度俺の意思で変化させられるかもしれない。

となれば、さっそく実験開始である。
あ、ちゃんと母子は戻してあげました。

場所は変わり、大学のサークルにて。
前々から学内で噂になっていたヤリ目のサークルメンバーに、今回の被験者になってもらうことにした。

女としてそこに興味がある、という話を、そのサークルのメンバー相手に言うと、二つ返事で俺を部室に連れて行ってくれた。
その際に俺の体を嘗め回すように見たのは、とりあえず許してあげよう。どうせこの後まともなエッチはできなくなるんだからね。

という事で部室に到着すると、そこには如何にも「ヤってます」と言わんばかりの嬌声が、既に室内から聞こえていた。

「さぁ中に入ろうか? どうせ君もそれが目的で来たんでしょ」

とか言いながら、部室まで連れてきてくれた男は俺の尻を触ってる。腹立ったのでその左手を『分解』してやると、

「じゃあイこうか、きっと君ならみんな歓迎するよ」

と、自分の左手が取れた事を気に留めずに室内の扉に手をかけた。

(なるほど、特に意識せずに能力を使えば、向こうも意識しなくなる感じかな…)

細いテグスの“手”を伸ばして、向こうには気づかれないよう左手を、裏表逆に『接続』してあげると、戻った掌で俺に入室を促してくれる。
それでも異常を感じてないように見えるのは間違いじゃないだろう。普通なら手が逆になったことで発生する違和感に気づかない訳ないだろうし、気付いたら絶対に驚くだろうし。

室内に入ると、そこには既にお楽しみ中の男女が複数人。
主に楽しそうに腰を振っている男が3人と、同様に受け入れている女が1人、なんだかぐったりしている女が2人いる。

「センパイ、今日3人目ですよ。ほら、前から噂してた羽張って娘です!」
「おぅ、本当か? ようそこウチに。楽しんでいってくれよ」

ぐったりしてる女性相手に腰を動かしてるリーダーと思しき男は、俺を見てゲスな笑いを浮かべている。
まぁそうだろうね、連れてきた男が後ろで扉の鍵を閉めてるし、もう逃がさないという様子だし。
それに3人目だって? つまりコナかけてきた相手を無理矢理ヤっている相手の、俺が3人目にあたるというのだろう。

(それを抜かすと男が4人、女が1人か…。バランス悪いなぁ)

ぼぅっと考えていると、後ろから俺をここまで連れてきた男(左手が表裏逆)が、後ろから俺の胸をわしづかみにしてきた。
右手はともかく左手は手を裏返しにして、ちゃんと掌側で俺の胸を揉んできているが、ちょっと痛い。というか揉み方がなってない。乱暴な手つきだ。

まともに相手してくて、行為が気持ちよかったら扱いを考えてみたかもしれないが、どうやらそれは望めそうにない。
そもそも女性の扱い方も問題だ。ぐったりしている女も、喘ぎじゃなく呻きが口から洩れている。

テグスの手を伸ばして彼女達以外、サークルメンバー全員の首を『分解』してあげた。

「さて、と」

先程まで行為でうるさかった部屋は、あっという間に静かになった。それもこれも、うるさくしていた連中が全員静かになってくれたからだけど。
床に落ちているのはサークルメンバーの男4人と、女1人。それぞれの首と体だ。

それぞれの頭に簡易的な洗脳を施し、俺が良いというまでゾンビのごとく付き従うようにして体に『接続』させて戻す。
連れ込まれた2人の女性の対処は、まず菫ちゃんと胡桃ちゃんを呼ぶ。次にここであったことの記憶を消してあげて、来てくれた2人に処置を任せた。汚れた体は運動部のシャワーを使わせてもらえばいいだろう。
幸い彼女等は運動部所属だったので、そのあたりの記憶処理は簡単だった。なにせ「さっきまで部活とは別で運動をしていた」という記憶を差し挟んであげれば済んだのだから。

そのままサークルメンバー5人を大学近くの事務所、拠点5号にまで連れてきて、さぁどうするものかと悩み始める。

「とりあえず適当に首を乗せ換えてあげるのは良いとして…、男が多いんだよなぁ…」

正直こんな連中の為に、拠点に備えてある女体を使わせてやるつもりは無い。本当に手が無い限りは、渋々使うしかないことになるのだが。
それぞれの体は、『分解』された頭を抱えて並んでいる。

…どうやって能力確認のために使い潰してあげようか。久しぶりに楽しめる悩みが頭の中を占め始めた。

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