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Patchworker Divide

2020/05/06 14:01:35
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D11片「行為//結実」

「ねぇみーくん。なんか、改めて子作りするって考えると、緊張しない?」
「そりゃ、少しは緊張しますけど…。今更じゃないですか?」
「そりゃそうなんだけど、ねぇ?」

お互いに服を脱ぎ、裸になっている。
撫子さんの股間には『接続』した俺のムスコがあって、それがギンギンに勃起している。
理由や心情はどうあれ、向こうの俺とのセックスをすることに期待をしている事は間違いない。

「じゃあ撫子さん、良いですか?」
「良いけど、でもその前に…」
「ん…」

ベッドに横たわる俺に、撫子さんが覆いかぶさるようにしてくる。
前戯も無しにするのかと思ったが、それより先にキスをすることになった。女同士の柔らかい唇を感じ、体を押し付けられるたびに胸同士がむちむちと重なり合う。

「ちゅ、ちゅ…っ、んちゅ、んふ、ぅ…」
「ちゅぷ、ふぁ、んむ…、ちゅぅ…」

もしかしたら最後になるかもしれない行為。それを刻み込むように、俺と撫子さんの唇は離れる事を拒むように、ずっと口づけを続けている。
唾液が絡まり、抑えたような声が漏れるキスの味は、漫然としていた時とは違うような感覚さえしてくる。

その瞬間、ふと股間に熱いモノが押し付けられる感触がしてきた。

「もう、しちゃいますか?」
「もうじゃないよ。私は今すぐしたい気分でいっぱいだよ」
「それじゃあ…、良いですよ、撫子さん」
「うん…っ!」

ずぶり、と挿し込まれる感触。熱い肉の棒が俺のナカをかき分けて挿入してくる。
今まで女という立場で何度か味わった、俺自身の肉棒。それがこうして生の感触のまま俺のナカに入ってくる。

「んぅ…っ! 撫子さん、ちょっと痛い…」
「ごめんねぇみーくん、でも私、今回に限ってはあんまり我慢できないから…」

あまり濡れていない膣内を、半ば無理矢理進んでくる俺の肉棒は、少しだけ痛みを伴ってやってきた。
これがもし、入念に前戯を繰り返して濡れていたのなら、何も問題はなかったのだろうけれど。

「でも良いよね、みーくん女として色々知ってるし、気持ち良くなってくれば濡れてくるよね」
「撫子さん、それ強姦魔の言い分に近いです」
「かもしれない…」

撫子さんの言葉に笑い合いながら、また俺達はキスをする。お互いの胸をお互いに揉んで、俺のナカが濡れてくるのを待っている。
その分だけ撫子さんが動くのを我慢してもらう事になるのだが、お互いにそれでも構わなかった。
二重の意味で愛した人を受け入れる、という事に、俺のナカは期待し、少しずつ潤滑油となる愛液を染み出してきたのだから。

「…そろそろ、良い?」
「良い感じに、なってきました…。動いて良いですよ、撫子さん」
「うん…、うんっ!」

痛いくらいに張り詰めていた俺の肉棒が、俺のナカで動き始める。
身体を押し付け、腰を押し付け、水音を鳴らしながら腰を叩きつけてくる。

「あっ、はんっ! みーくん、なんかいつも以上に気持ちいい!」
「俺も、です…っ、撫子さんの動きを、本気で欲しがってる感じが…っ」
「もうみーくんんってば! 自分のおちんちん欲しがってるなんて、えっちぃ子!」
「それなら撫子さんだって、これから自分の入る体を仕込むんですから…、悪い子じゃないですか」

腰の抽送は止まらない。俺と撫子さんの喘ぎ声を部屋中に響かせ、そこに添えるように肌同士がぶつかり合う音がする。
いつもならもう射精してる位の腰の動きをしても、まだ撫子さんは射精しない。普段使っているちんことは違う俺のモノだからか、それとも我慢して我慢して我慢して、その果てに濃い精液を射精する事を願っているのか。
もしかしたらその両方かもしれないし、俺と一緒にイきたいのかもしれない。
ただわかる事は、撫子さんは我慢していて、俺を気持ちよくさせてくれている。
だから俺も彼女の動きにされるがままで、腰を叩きつけられ、女としての快感を骨の髄まで味わっていた。

でも、いずれ限界はやってくる。
俺の性感と撫子さんの性感、その両方が限界に近づいてくるのが、膣内の感覚から理解できていた。

「みーくんっ、みーくんっ! 出るよっ、出しちゃうよっ!」
「はい…っ、出してください…! 俺のナカにいっぱい、撫子さんの子供を仕込んでください…!」
「出しちゃうから! イってみーくん! 私も、イくぅぅっ!!」
「んうぅぅぅぅっ!!」

腰を押し付けられての射精。子宮口に押し付けられた亀頭から直に浴びせられる、我慢の末の精液。
いつも以上に敏感になっている俺の、撫子さんの子宮は精液の熱を切欠に絶頂し、排卵される。
今この瞬間では、大量の精液によって俺の卵子が蹂躙されているだろう。

…そして、どこか直感にも近い形で、悟った。

(あ…、今、受精した…。俺、お母さんになったんだ…)

俺の精液が撫子さんの卵子と合体し、1つの命が誕生したと、根拠も無く思ってしまった。
同時に撫子さんが、満足そうな表情で俺に微笑みかけてくる。

「…今までありがとう、みーくん。新しい私の器、子供の私、大事にしてね?」

その瞬間、彼女の体から力が抜けて、内側から神様が出てくると同時に、俺のお腹に入っていった。
これは、本当に子供が出来たのだろう。そして新しい存在として産まれ直す為に、神様が俺の子宮に宿ったのだろう。

…色んな意味で、これから大変だなと考え、俺は新しい命の宿ったお腹を撫でさすった。


D終片「接続//分解」

その後。
数年間神様に憑依され続けていた「日浦撫子」は、自分の状況に驚いていた。
…そりゃ当然だろう、目が覚めれば裸で、女同士で抱き合っていて、股間に男のモノが生えているんだから。
説明には苦労すると思ったけれど、

「…何となくわかるよ、羽張くん。私の感覚からすれば久しぶり、なんだろうけどね」
「そうですか…。日浦さん、ここ3年間くらいの事は、どれくらい憶えてますか?」
「…憶えてるけど、夢の中の出来事みたい、って言った方が良いかな。
一緒に住んで、就職して、苦労して…、長い夢を見てたみたい」

そうして、大きく平手打ちをされた。

「…叩かれた理由、分かってるよね?」
「解ってるつもりです。日浦さんの人生をメチャクチャにした事、好きでもない男とセックスした事…。他人の復讐に付き合わせてしまった事。
他にも数えられない位、あなたに悪い事をしてきました」
「解ってるならよろしい。…罪滅ぼしの方法は、どうするつもり?」
「お金なら払いますし、出てけと言われれば出て行きます。…ここも元々、日浦さんの家の持ち物ですから」

そのまま、じっと見つめられていると、少しばかりため息を吐かれた。

「…羽張くんはそれでいいの?」
「正直、殺されても文句が言えない位の事はしてるって思ってますからね。ですけど…」

「ですけど、殺される訳にはいきませんから、それ以外の方法でどうにか矛を収めてもらうつもりではあります」
「それは、さっき私の中から出て行った神様の為?」
「えぇ、俺の子供の為でもあります」

そう言い、俺は自分のお腹を撫でる。もうこの中には、いかに小さくても俺の子供が宿っているのだ。これで俺の体を無碍に扱う事は、今まで以上にできなくなった。

「…わかったよ、羽張くん。こう言うのもなんだけど、3年分の夢のおかげで君の事を悪く思えなくなってるのも事実なのよね」
「日浦さん…」
「それに、一応その子の父親は私って事になるんでしょ? それも考えると…、…さすがに君をどうこうして、って言うのは無いかなと思ってる。
まぁ、今まで通りとはいかないかもだけど、一緒に住んであげてもいいよ?」
「……すみません。ありがとうございます」

正直、こう言われるのは想定していなかった。いや、想定はしていたかもしれないけれど、あり得ないだろうなと頭の隅に追いやっていたくらいの可能性だったからだ。
彼女の寛大さに頭を深く下げながら、今の生活を続ける事ができる事への安堵を、俺は感じていた。

「あ、それと。私今の会社辞めるから」
「それはどうして?」
「そりゃ、教師やりたくって教育学部通ってたんだもの。ちょっと遅くなったけど、再就職先が決まるまでちゃんと面倒見てよ、羽張くん?」

それからしばらくして、俺は大学を休学した。
男として通っている関係上、これからの事を考えてしまえば学校に通う事はできなくなるだろう。
ゆっくりと育っていくお腹の事を隠しながらなんて、無理が出てくるに決まってる。それならいっそ子供を産むまでは休学して、子供を産んでからゆっくり復学すればいいと考えたからだ。
もちろん復学をしなくてもいいとも思ってる。子育てには手間がかかる事くらい解ってるし、日浦さんの手を借りられるとはあまり思っていなかった。
それでも、日浦さんはこう言ってくれた。

「いや手伝うよそりゃ。責任ってものも少しはあるし、今の羽張くんは女だし。いくら男だからって無理はダメだよ?」

その言葉は素直にありがたいと思ったし、彼女に深く感謝もした。
ならなくていい「父親」という立場を受け入れてくれたのもあるし、自分の再就職で大変だというのに付き合ってくれる面倒見の良さに陳謝したのもある。
彼女の性格は、撫子さんの時とは違う筈なのにどこか同じような感覚があった。もしかしたら彼女の元の性格に沿って、神様が“撫子さん”をしてくれていたのかもしれない。

そうして、大きくなっていくお腹に期待と、少しの不安を込めながら、俺はお腹の中で彼女を育て始めていた。


「…随分お腹大きくなってきたね。そろそろ覚悟は決まった? 羽張くん」
「えぇ…。世のお母さんたちは、こんな苦労をずっとしてきて、俺達を産んでくれたんですね」
「本来なら私もそっち側になる筈だったのにね、どうしてこうなったやら」

十月十日後。出産予定日が近づいて入院してからも、日浦さんは付き添ってくれていた。
高校の教師として働くことを始めたのに、それでもこうして俺のお見舞いに来てくれたのだから、本当にありがたい。

「っくぅ…! ま、また…!」
「ナースコールはしてあるから、焦らなくていいよ。…ほら、手を握って」
「はい…! うぅ、産まれ、そう…!」

そして先程から、定期的に陣痛が始まっていた。お腹の中に存在してる“娘”が、俺に逢いたいと言ってるようで、この痛みさえ愛おしく思えてきた。
日浦さんの繋いでくれる手の頼もしさと、お腹からの乱暴な痛みの二つの感覚から、その時は近いという事を俺は理解していた。

…詳細は省こう。

というより、出産の際に関してはかなりの苦痛を伴っていた、という記憶しか無くって、詳細の事なんて覚えている訳がなかった。
ただひたすら産みの苦しみに苛まれてた、くらいしか覚えてなかった。

そうして産まれてきた子は女の子だった。
俺の精液と撫子さんの卵子とで生まれてきたおかげか、親の贔屓目に見てもかわいい子で、将来が楽しみになるばかりだ。

そうして産まれた娘と一緒に時を過ごして、5年が経過した。

日浦さんは俺と籍を入れ、羽張撫子と名を改めることになった。
本当にいいのかと俺は聞いたけど、彼女が言うには、

「いやぁ、本当はあの子が産まれた時点でキッチリ別れるつもりだったんだけどね。
曲がりなりにも片親だけしかいない、っていうのは教育に良くないと思ったのと…。
…私に憑いてた神様の影響か、羽張くんの事を悪く思えないんだよね。好き、っていうのかは微妙に解ってないけど…。
やっぱり、君の側に居たい気分があるのよ。…まぁ、そんな関係でも良ければ…、夫婦にならない?」
「…ありがとうございます、日浦さん」
「名前で呼んでいいよ、羽張くん」

俺は有難く、その話を受ける事にした。呼び方も苗字から、前のように名前で呼ぶことになって、撫子さんは俺の事を「あなた」と呼んでくれている。
今では俺の能力の事も知ってて、かつての“撫子さん”のように男として俺を抱くことも、女として抱かれることもしている。
最近は「自分も子供を産んでみたいかも」という話をしている。弟妹ができる日も近いかもしれない。

あ、そういえば結婚を機にきちんと子宮は撫子さんに『交換』で返した。
さすがに子供を作る関係上、DNAが違うなんてことをさせちゃいけないしね。…え? 俺の体が他人の寄せ集めだから一致なんてするはずない?返す言葉もない。

娘は「縁(ゆかり)」と名付け、すくすくと育っている。
可愛い盛りの愛娘ではあるものの、困った事としては

「なーちゃん、みーくん♪」

俺と撫子さんの事を、父母と呼ばない事なのだが…、抱き着いて甘えてくる姿を見る度に、これでも良いかと思ってしまう。
ある日ふと気になって聞いてみた事がある。

「ねぇ縁」
「なぁに、みーくん?」
「縁は前の事、憶えてる?」
「前って…、うん、憶えてるよ。私とみーくん、恋人同士だったよね?」

その言葉に、驚く反面喜びも感じてしまった。
神様は俺をそう思ってくれていた。そしてきちんと忘れずに、縁となってもその記憶を引き継いでくれていた。

「…縁、おいで?」
「…えへへ、みーくん♥」

娘を抱きしめると、小さな腕でしっかりと抱き返されてくる。
心地よい感触を全身に感じていると、後ろからそっと抱きしめられる感触がした。

「撫子さん?」
「なぁに? あなたは妻の私を放っておいて、縁と恋人に戻るつもり? 娘とは言え浮気はダメだよ?」
「なーちゃん、やきもちかな?」
「おうよー。みーくんは取らせないぞー?」
「うわー、横暴だー♪」

縁の頬をもにもにしながら、撫子さんは彼女なりに娘を愛してくれている。そんな彼女のお腹には、既に縁の妹がいた。

あの不思議な夢から始まった俺の非日常は、今でも続いている。
最近はすっかり能力を使うことは無くなったけど、それでもいざという時には自衛のために使う事もあるし、完全になくなってしまったわけではない。
ただ、使う機会が殆ど無くなっただけだ。

男の体に戻る事も、縁を孕んでから6年間一度も無く、俺はこの姿のまま、男の母親として過ごしている。
時折色眼鏡で見られることもあるけれど、こちらが堂々としてれば口さがない噂も次第に消えていった。

縁が育って、もしかしたらお嫁に行って、そして子供も作るかもしれない。
ずっと先の未来予想図だけれど、俺の能力がまたどこかで必要になるかもしれない。

そんな事を考えながら、能力が鈍らないよう醤油のボトルと酢のボトルの中身を『交換』しつつ練習していると、

「ねぇねぇみーくん! 見て見て!」

慌てたように縁が台所に入ってきて、俺に何かを見せに来た。
…これは、幼稚園のバッグ? でも肩掛けの紐が取れてる?

「なんとなく、『みーくんみたいにできないかな』って思いながら手洗いしてたの! そしたら…、取れちゃった!」
「……まさか」

まるで『分解』した時のように、解れなどなくきれいに取れている。
縁は楽しそうに椅子をバラバラに『分解』し始め…。

あぁ、縁も受け継いじゃったか、この能力を。

どうやら、この能力との縁は切れそうにないみたいだ。
ということで、Patchworker、これにて完結とさせていただきます。
最後の方はTS関係なくなってきたんじゃないかと思う事しきりですが、それでもTSF物と言わせてください。
…いやぁ、16年5月4日から書き始めて丸4年、ようやく連作ものを終わらせることができました。
拙作を読んで下さり、感想を下さり、お付き合いいただき、まことにありがとうございました。
罰印
0.1340簡易評価
6.100名無し
完結お疲れさまでした。
11.100きよひこ
お疲れ様でしたー