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バニー・イン・ナイトメア

2016/02/22 01:36:26
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.1『夢の始まり』

「バニー・イン・ナイトメアへようこそ!あれ?初めてのお客様ですか?」

俺の目の前にいる金髪リボンのバニーガールが俺を出迎えた。
あれ?というかここはどこだ?何で俺はこんな所にいるんだ?
俺は辺りを見渡す。どうやらここはパブか何かのようだ。

「ああ、お客様。ご自身の状況が理解できていないのですね。
ここは貴方様の夢の中。夢の中の狭間に生まれた快感の楽園、バニー・イン・ナイトメアです」

「うーん…いまいちピンとこないけど」

「まぁまぁ。夢の中なんですし。細かい事は気にしない」
それより、とバニーガールは話を続ける。
「バニー・イン・ナイトメアでは、貴方様がバニーガールの女の子になって、女の子の快感を味わう事が出来ます」

そう言うと、バニーガールは自身の体のラインに沿うようにつつーっと、指を這わせる。
「体にピタリと張り付くようなバニースーツ。むちむちとしたストッキングの感触、ハイヒールの拘束感…
それらを纏うのは自身の魅力的な女体…どれも今までに無い体験となるでしょう」

俺がバニーガールの女の子に?
ごくり、と俺の喉が鳴る。
女の子になって、女として楽しみたい。それは男の願望の1つだと言える。

「ただし…」
「ただし?」
「一応、バニー・イン・ナイトメアという名前で通ってますので。貴方様が楽しんだ後には悪夢が待ち構えています。
これは楽しんだ分のお代という形になりますね。タダで楽しむ事は出来ないのです」

「なんだよそれ…」
「まぁ、夢の中ですからね。荒唐無稽がまかり通ります。
こほん。さて、どうしますか?今ならタダで…悪夢無しで簡単な体験サービスから始められますよ?」
「…じゃあ、体験サービスからお願いしようかな」
「ふふ。分かりました。体験サービスでは私の体を使って楽しむ事ができます。
あ、これから起きる事に期待してるみたいですね。貴方様のそれ、大きくなっていますよ」

あ。本当だ。落ち着け俺の分身。

「女の子になると、その感覚も消え失せますよ。勃起しているとその分違和感も大きいでしょうね。
…それじゃあ、始めますよ。それっ!」

バニーガールが何か呪文を唱える。
すると、俺の体の力がすうっ、と抜けていく。そして、目の前のバニーガールに吸い込まれていく。

一瞬で意識が朦朧として、そして一気に覚醒する。
最初は胸に二つの重りがある事に気がつく。これは、女の子の胸!?

「うわっ!?」

急に体のバランスが変わった事と、履いていたハイヒールの不安定さによって俺は前方へと倒れ込む。
大きな胸が床へと投げ出され、形を大きく変えた。
ふかふかの絨毯によって怪我は無かったが、いきなりの変化に俺はドキドキしまくりだ。

ゆっくりと俺は起き上がり、自身の体をまじまじと観察する。
両手を見ると、細くしなやかな指が見て取れる。小さくて柔らかく、男のゴツゴツしていた指とはまるで違う。
その指で肩にかかる髪をいじると、ふんわりといいニオイが漂ってくる。

視線を下に向けると、大きな胸が視界を塞いでいた。
「うぉ…」
思わず声が出た。バニースーツによって谷間が強調されているそれは、自分の目から見るとすごい迫力だ。

谷間越しにさらに下へと視線を移す。
ハイレグの股部分には邪魔なものが存在せず、のっぺりとした空間があるだけだ。
俺は今明らかに興奮しているが、勃起出来ないというのはとても不思議な感覚だ。

足はタイツによって全体を包まれている。
適度な締め付け感とツヤ具合にさらに興奮せずにはいられない。

俺は立ち上がり辺りを見渡す。
建物が大きくなったような気がする。いや、俺の視点が下がっているのか。
ご丁寧に目の前に鏡があった。いつの間に。

そこにはさっきのバニーガールの女の子がいた。
そしてやや足を開き気味に近づくと、俺とまったく同じように近づいてくる。

この女の子が俺… 俺は今女の子、恥ずかしいバニーガールの恰好の女の子。
顔がほんのり赤く染まっている。とても可愛らしい。この女の子に俺はなっているんだ。

至福の感覚。素晴らしい体験だ。
俺はさらに楽しもうと、自分の胸に手を添えようとした。

――だがその瞬間。
急に体の力が抜け、俺の魂がこの体から抜け出していく。
いやだ、抜け出したくないという俺の欲求は叶えられず、一瞬の眩暈と共に俺は元の体に戻っていた。

「あ…」
ゴツゴツとした男の体。猛るような男の象徴の感覚。
女の子のふんわりとしたものとはまるで違う、とてもつまらないものに感じてしまった。

「体験サービス、お楽しみいただけましたか?」
目の前のバニーガールが言う。自身の胸に手を添え、乳首を抓むような動作をしていた。
「体験サービスでは性感まではお楽しみできません。もしこれ以上を望むのであれば、こちらの契約書にサインを。
OKでしたら全てのサービスを楽しむ事が可能です。…ただし料金…悪夢が発生するのをお忘れなく」

体験サービスはこれで終わりか。
どうしよう。悪夢…悪夢はいやだ。
だがすごくいい体験だった。もう一度あれを体験してみたい。
そしてもしサインすれば、それ以上の事を楽しめるんだ。

俺は少しだけ悩んだ末、契約書にサインをしてしまった。

「ご契約承りました。では改めまして、バニー・イン・ナイトメアをお楽しみください。フフフ」
バニーガールは妖しく微笑んだ。

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