「はぁ…」思わずため息をつく。
「さっきの、何だったんだろうね」
敏明が聞いてくるが、俺も良則もわからないと答える。
命令がわかるようになる、だったか?理解できるようになる…だとしてもよくわからない。
「それにしても、お前と双葉はずいぶん息が合ってるな」
「あー…まあ、長い付き合いだからな。てかあれ息合ってるっていうのか?」
「ああ。俺が双葉を好きだったら嫉妬する程度には」
ニヤリと笑う良則。その表情で冗談だというのはわかる。
俺と双葉は家が隣同士、いわゆる幼馴染みというやつだ。
昔から変なやつだったのは全く変わらない。
「僕が二人と友達になったのは小学校でだから、それより長いんだよね」
敏明の言うように、小学校で同じクラスになったのがこいつと仲良くなったきっかけだ。
ちなみに四葉は中学で双葉に紹介されて、良則と若葉ちゃんは高校で知り合った。
「で、二人は付き合ってるのか?」「ブッ!?ゲホッ、ゴホ…」
良則の唐突な問いに飲んでいたジュースを吹き出しかける。
「冗談でもやめてくれ…俺が好きなのは…」
若葉だ。なんせ……あれ?なんでだっけ?
女性陣はみんなギャルのようなタイプだから、清楚な子が好みの俺はそんなに惹かれなさそうなんだが。
「……おい、なんだその目は」
敏明と良則が興味の目で俺を見ている。
「言わねえぞ。お前ら女子か」
「素直じゃないんだね、清彦」
そんなんじゃねえよ、と言いつつ敏明の頭を小突く。
「ヘーイ、男子たち。盛り上がってるかーい!?」
雑談をしていると双葉たちが帰ってきた。
「ぼちぼち」
「よろしい。じゃあ続きいこうか」
「まだやるのか…」
と口では言うが、さっきの命令が気になる。
みんなも同じようで、双葉が持つ棒に手を伸ばしていた。
「神様だーれだ?」「あたしー」
若葉が手を上げる。
「えーと、なんだっけ?」
なんだっけってなんだ。もしかして、さっき出ていた時に次の命令を3人で決めてたのか?
「神様と1番から5番は神様ゲームで変わっていたら元に戻る、だっけ?」
言い終わると若葉がビクンと身を震わせる。
その金髪が根元から黒くなっていき、ウェーブも解けてストレートになる。
「え…え?」
若葉…ちゃんが困惑の声を上げる。
露出度が高めの服は清楚なワンピースへと変わっていく。
「あ…え?戻っ…た?え?」
俺たち-双葉を除く-は驚愕の表情でそれを見ていた。
「あ、あの…双葉ちゃん?何が…」
震えた声で問いかける若葉ちゃん。
「若葉ちゃんは神様の命令でギャルになってただけだよ?で、今の命令で元に戻っただけ」
さも当然のことのように答える双葉。
「……いや。いやいやいや。なにそれ!?」
最初に口を開いたのは俺だった。
「え?言ったでしょ?神様の命令は絶対だって。神様は全知全能なんだぞー」
「あ、ありえないだろ!?若葉ちゃんみたいな子がギャルになんて…」
「なってたよね?」
そう言われると何も言えなくなる。言えなくなるが…ありえない。
こんなおかしいゲームはとっとと終わらせたい。
「じゃあ続けようか。あ、私はエッチな命令でもいいからね♪」
「えっ!?」
若葉ちゃんが真っ先に声を上げる。顔はやっぱり真っ赤だ。
ついでに俺を含む男たちも思わず目を見開く。
「えー、そういうこと言っちゃう?じゃあ、私もいいよ♪」さらに四葉が続く。
エッチな、命令だと…?つい心が揺らぐ
「あれー、男の子たち、どうしたの?エッチな命令したいのー?」
はっ、いかん。危険な誘惑を断ち切り言葉を返そうとする。
「そうだ。神様が終了宣言するまではこれ終われないからね」
まるで俺が「終わりにしよう」と言おうとしているのを見越しているかのように双葉は言った。
こうなったら神様を引いて終わらせるしかない。
若葉ちゃんが持つ棒を取る…1番。外れだ。
けど、敏明、良則、若葉ちゃんが神様になれば終わらせてくれるはずだ。確率は2/5。
どうか双葉か四葉以外に当たってくれ…!