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魔女の変身薬

2017/01/28 16:19:23
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あのグミ粒のような薬食べて姿を変えるのは一日に一度、姿を変えたなら6時間以内にもう一粒食べて元に戻る事。
とにかく姿を変えたままで長時間過ごしたり、連続して服用する事だけはやってはいけない。

それがあの薬を摂取する際の約束。
先日はうっかり変身したまま寝過ごしてしまったからあんな副作用が出た、それも一度だけだし今は何ともない。
あのお姉さんに言われたとおり薬を使う約束事さえ守ればいい、今度から十分に気を付ければいい。

と、今日姿を借りたのはいわゆる変身美少女ゲーのヒロイン。
現実にはあり得ない、いかにもな造形もこの薬なら違和感なく変身できてしまう。

「衣服だけは仕方がないよな」

不満を言えば、変われるのはあくまでも髪の毛と肉体だけ、ふりふりなコスまでは再現してくれない点くらいか。
でも、こうやって現実にはいない女の子の体を触って楽しめる事に比べたら些細な問題だった。


だぼだぼのTシャツ一枚を身に着けディスプレイに向き合えば、そこには今の俺と同じ姿の子が映し出されている。
画面の中の彼女は得体のしれない化け物に拘束され、まさに絶体絶命と言った違いはあるのだけれど。

『ぐはは、そんな強がりがいつまで続くかな』

指がマウスをクリックするとヘッドホンから男の声が響く。
今画面の中に居る彼女を倒し、まさに凌辱しようとしている敵の声だ。

『あ、ああっ、やだ……感じたく、ないのに……』

そいつに大ぶりな胸を揉まれてヒロインが喘ぐ。

カチッカチッ。
マウスのクリック音と共にテキストが流れ、ヒロインが快楽に流され落ちていくという王道、あるいはテンプレと言えるありがちな展開。
しかし画面を挟んだ反対側、プレイする側である俺は普通とはまるで違う。
普段であれば股間に伸ばしている左手、それは固くなった竿ではなく自分の胸をまさぐっている。ヒロインを凌辱する悪役のように少し乱暴にだ。

『ふん、ここをこんなに固くしおって、どの口が言いよる』

『「ふあっ」』

すっかり固くなった乳首を人差し指と親指で摘み上げれば、計ったように声がシンクロした。

(これやばいな、すげぇゾクゾクする……)

いつもと変わらず美少女ゲームをプレイして抜く。
ただそれだけのことではあったが、折角の機会だ。
同じ事をするのなら女の子の、それもゲームのヒロインになってみたらどうだろうか。
特に理由なんてないただの思い付き、それを実践してみただけ。そのはずだったのだが……これが予想以上にいい。

張りつめていた股間の感覚を感じられないのは正直物足りないと思った。
片手でしごくだけとは言え、これはこれで興奮するし気持ちいいことは確か。

でも、今感じているのはそれとはまるで違う。
上手く言葉に出来ないけれど、エッチな事をされる側だからこその感覚、とでも言えるだろうか。

乳首を執拗にこね回す細くしなやかな自分の指、太く無骨で思いやりを感じさせない荒々しいそれに置き換え妄想する。
自分がゲーム内のヒロインのように、敗北し捕われそして意思とは関係なく凌辱されようとしているならば。

「んっ、ふぁ……」

ぞくぞくとした感覚が背筋を駆け上がり、勝手に切ない声が零れた。
自分の体を好きにされるという怖さ、そして気持ちよくされてしまうという期待。

(あの時のオナニーのように、クリトリスや乳首を指でコリコリされて、あそこを指でかき回されて……!)

そんなな事を考えれば考えるほど、体が火照り、きめの細かい肌がじんわりと汗ばむ。
下腹部がきゅんと蠢動すれば、それは女の子のあそこが準備を始めた証だ。

『ああ……やだ、私のあそこ……濡れちゃってる……っ』

その時、か細く羞恥に震える声が耳に入ってくる。
今の自分の声と同じだけれど俺ではない、ヘッドホンから流れ出たゲームの中のものだ。
この口が動いたわけじゃない、わけじゃないんだけれど……なんで、背筋を駆け上がる甘い痺れが止まらないのか。

『いやぁやめて……ふあ、んん!乳首ばっかり…』

『ひぃっ、だめ、だめぇ……そこ、敏感だから、そんな強く……あああっ!』

まるで自分が喘ぎ声を上げているかのような錯誤に脳が陥る。
ゲームの中に入り込み今まさに凌辱されている、そんな錯覚すら覚えるほどにオナニーに没頭していた。
鼓動は早く呼吸は熱く荒く、もうゲームの声なのか自分が出している声なのか判断すらおぼつかないくらいに。

『あ、ああっ、こんな……恰好……っ』

閉じていた脚を強制的にM字に開かれ、瞳を伏せ恥ずかしさに震えるヒロイン。
椅子の上で同じようなポーズを取ると、恥丘の中央に指でくにくにと苛められる恥ずかしい部分が見えた。
きっと今の自分も画面の中と同じような切ない顔をしているんだろう。
脳裏に浮かぶ姿に、ますます興奮の度合いが高まっていく。

クリトリスを刺激していた指が、ぷっくりと厚みを増した恥肉を割り開く。
とろり、と指に絡む一筋の滴。
愛液に濡れた中指で割れ目を上下に擦ってやれば、じくじくとした疼きが愛液と共に湧き出してくる。

(こんなに濡れるんだ……)

何度かベッドの中でやったオナニーとは違う、濡れ方も気持ちよさも。

「ふあ、あっ……い、いい、これ……」

今の方がずっとずっと上。

『こんなに濡らしおって、正義のヒロインが聞いて呆れる淫乱めが』

「『やあ、言わないで……言わないでぇ』」

悪役の罵倒を否定するヒロインの言葉を意識してなぞれば、切なさがどんどん高まっていく。
やばい、これもう、我慢できそうにない……!

マウスを握っていた右手を離し、自分の乳首を思いっきり揉み上げる、と同時に

『ならその身に分からせてやろう……お前は敵に愛撫されイってしまう淫乱だという事をなぁ!』

最後のクリックでオート送りにしておいたテキストからそんな声を聞かされてしまっては、ヒロインと同じように頂きに達してしまう他に道があるはずもない。
違う点と言えば、部屋の外に聞こえないよう声を抑え無ければならなかった事くらいだろうか。

「ふは、あ……すっげぃ、んは……気持ちよすぎる、だろ……」

ばくばくとした鼓動を落ち着ける為、何度か深呼吸を繰り返す。
ゲーム画面はいよいよ挿入という場面だけれども、とてもそこまで同調するような気力は残っていない。
力の入らない手で何とかヘッドホンを外し、背もたれに体を預けるのが精一杯。
そこでようやく汗と愛液と体液まみれになった椅子と床に気付き、大きなため息を吐く。

「気持ちはいいんだけど、後始末、何か考えないと……」

ぐっしょりと湿ったタオルとTシャツを洗濯機に投げ込みつつそう呟かざるを得ない。
しかし、それを差し引いても素晴らしい体験だった事に疑いはなく

(これからしばらくこういうやり方も良いかな……)

と、内心ほくそ笑みながら変身薬が入った瓶に手をかける。
そうだ、そのためにも忘れちゃいけないことがあった。
正直もう少しオナニーを楽しみたいという欲求はある、でもこの薬がある限りこの先も楽しめる。
今ここで無理する事はないのだから。

────────────────────────────────────────────────────────

それから大体二日に一回、学校から戻り寝るまでの間、漫画やらゲームやらのヒロインに変身し自慰を愉しむようになった。
このペースなら変身薬の使用制限に引っかかる事もないし、男と女の気持ちよさを交互にすることで特有の楽しみ方も見つけたからだ。

「きよひこクン、私のオナニー……楽しんでね?」

それが自分のスマホに変身した姿の動画を撮るという事。

「ん、んんっ……乳首もクリトリスも、気持ちいいの……」

勿論生オナニーも固定したスマホのカメラに見せ付けるようにねっとりと大胆に。

「私の恥ずかしいところも全部、見せちゃうね……?」

性器のアップを写メに撮る事も忘れない。

正直オカズに困っている俺としては刺激的すぎた。
自分が変身している姿だという事は分かっている、分かっているけれど。
一度媒体というフィルターを通してしまったが最後、二次元上のキャラクターがその場に映っているようにしか見えないのだから。
そして、これでもかとエロい姿を見せてくれるのだから、夢中にならない訳がない。

女の子のオナニーを愉しみつつ、それをカメラに撮るという倒錯的な興奮に身を震わせ、翌日それをオカズに男として性欲を爆発させる。
そんなサイクルを繰り返していくうちに、この変身薬についても幾つか新しいことが分かってきた。

「うわ、胸こんなに大きくできるんだ」

その一つが、体形や顔のパーツなどを自分の意思である程度自由に出来る、という事。
胸の薄いヒロインを巨乳になるよう変身したり、またその逆もしかり。
少し応用すれば人間ではない姿になる事も可能だった。

「ん、んん……耳も尻尾も、気持ちいって、ほんと……なんだ……」

「しらない、こんな翼の感覚、しらない……!」

ネコ耳を生やした獣人、トカゲの尻尾を持つ竜人、エルフ、天使や淫魔にまで。

姿を真似るだけじゃない。
尻尾や翼も体の一部のように思い通りに動かすことが出来る。

正直これは性的な気持ちよさとは別種のとてつもなく新鮮な感覚。
女の子の感覚を体験する事でさえ普通の男には不可能だというのに、さらに二次元にしかいないような亜人の美少女になれてしまう。

こんなの、のめり込んで行くなと言うのは無理だ。
そして、のめり込めばのめり込むほど際限なく行為がエスカレートしていくのを止められるはずが無い。

キツネっ娘になって、ふかふかの尻尾を扱きながら胸を弄る。
ロリ天使に姿を変えて、まだ幼い割れ目と乳首を開発する。
妖艶なサキュバスに変身し、悪魔尻尾を巧みに操り女の突起三つを力の限りひねり上げる等々。
多種多様の愉しみ方を模索し実践していく日々を初めてもう、二週間過ぎていた。

今日はその合間、男の性欲を発散する日ではあるのだが……
俺は抜きもせずパソコンの前で悩んでいた。
女の子になってのオナニーは気持ちいいし現状満足している、してはいるのだが……。
今までどんな事をして来てもそれは「手での自慰」という範疇を出るものではなく、少しばかりマンネリ気味に感じているのも事実だった。

ふぅ、と小さな溜息を吐き先ほど打ち込んだ単語を見つめる。
検索サイトの検索ワード欄に浮かぶ「ピンクローター」の文字。
電池を入れるボックスに振動する小さな卵型の器具がくっついた女の子の自慰ための道具、いわゆる大人のおもちゃ。
エロい本やゲームなんかでよく見かけるあれ。

せっかくこんな素晴らしい体験が出来るのだから、指だけでなく道具を使ったり様々なシチュエーションを愉しむのも乙なものだろう。

そんな軽い考えでパソコンの電源を入れたものの、いざとなって踏ん切りがつかないのだ。
何故だろうと自問する。
男の俺がこんな物を検索するなんて初めての事、だから本当にしてしまっていいものか迷っている気持ちはある。
でもそれ以上に、心の奥底にある上手く説明できない漠然とした不安。

そもそも、それの感情が不安なのかもどうか分からない。
それに押し留められるようにしばらく躊躇していたのだが……。

「まあいいか」

結局、それ以上深く考える事をやめ検索をクリックしてしまっていた。

「……こんな種類あるんだな」

画面を埋め尽くす検索結果、一つ一つを読めば新しい世界を垣間見た気がして鼓動が早くなる。
適当な通販サイトを見繕い一番手ごろで無難と思われるものを選んだだけだというのに、俺のあそこは完全にガチガチになっていた。

これを使いよがる姿を妄想し、これを使ったらどれだけ気持ちいいんだろうと期待し、そして何より、男なのにこんな物を買ってしまうという倒錯感。
それらに押し上げられる性感を抑えながら、受取人欄に「虎瀬 清彦」と打ち込みアパートの住所を入れる。
配送時間は学校から戻ってすぐがいい、支払い方法はアルバイト料の振込みのため作った俺の口座から引き落としとして決定。
受付完了の文字が画面に表示されて、ようやく一心地つけた。

「はぁー……」

目的を果たした、という達成感と、やってしまった、という少しの後悔がごちゃまぜになり、しばらく椅子の上から動けない。
勃起した男が抜けとばかりにその存在感を示すものの、どうにもそんな気が起きない、むしろ女の子でイきたいという欲求の方が強いという自覚があった。
僅かな迷いを経て、俺はあの薬を使うべく椅子から立ち上がる。

この日、俺は男女男女という一日置きのローテーションを崩した。

自分で勝手に決めた事だし今日くらいいだろう。

と、ローターを買った時と同じほんの軽い気持ちで。

────────────────────────────────────────────────────────

ごくり、と喉が鳴る。
手のひらの上でブブブブと小さな音を立てて震える小さな卵、つい先ほど届いたもの。
そこから伸びるコードがベッドの上に置いた円筒形の電源部分へと繋がっている。
それら全てがピンク色に染められたエッチな玩具。

「これがローターか……」

もう一度喉が鳴る。
今度のは今からそれを試す事に対する期待の現れ。

当然すでに女の子には変身済みだ。
ただ、今回は漫画やゲームの子の姿を借りたわけではない。
俺の一番好みな「彼女にするならこんな女の子」という理想を具現化したかのような姿になっている。
体形を思い通りに弄れるのなら、胸やお尻だけとは言わず全身そう出来るのでは?との思い付きを実践したというわけだ。

そのせいだろうか、あるいは新しい体験に対する興奮、その両方だろうか。
裸でベッドに腰かけるのも、動画を撮る為の準備をするのも、何度もやって慣れて来た事なのにドキドキと心臓が高鳴っている。

「まずは、胸に……」

摘み上げた指先が震えているのは何もローターだけの振動、と言う訳ではないだろう。
一度大きく息を吸い、吐き出し、ゆっくりとそれを大きめな胸の頂へ押し当てると

「ぷあっ!」

ぐっと体が強張り、溜め込んだ息が漏れる。
予想以上に強い振動に思わず体が拒絶の反応をしてしまったんだろう、取りこぼしたローターが床に落ちてしまった。

「やべ……いきなりあんな振動じゃびっくりもするよな、振動弱めにして、ん……あ、いいかも」

今度はより慎重により優しく、いきなり乳首に押し当てず遠いところから一周するように、次第に乳輪部分へ近づけていくように。
ローターの震えが乳首を細かく揺らし、くすぐったさと同時にピリピリとした疼きが湧き上がる。

「これ、ちがう、な……手でやるより、ずっと……ん!いい……よくなってきた……」

ローターの刺激に乳首がぷっくりと固く膨れ上がるのが目に入る。
今まで何度も見て感じて来たけれど、準備が出来たと言わんばかりの身体反応がとてもエロくで飽きが来ない。

「あ、でも、手も……悪くない、な……こうやって、両方、んんっ、ふあぁ……」

親指の腹と乳首でローターを挟み込むように固定し、空いたもう片方の手は寂しそうにしている反対の乳首を摘み上げる。
細かく優しい振動と荒々しく弄ばれる動き。相反する刺激を同時に味あわされては座っている事ももどかしい。

「あふ、すっげ……胸だけでこんな、んはぁ、いいなら……」

背中からベッドに倒れ込み、気持ちよさに痺れた頭で考えるのは何か。
そんなの言うまでもない。
シーツを引っぱりながらおずおずと開かれた足の真ん中、濡れ始めた割れ目に息づく女の子の肉芽。
そこにローターを使ったらどれだけ気持ちいのか、どんな風になってしまうのか

「はぁ、はぁ……」

女の子の肉欲に捕らわれた心を表すかのような熱い息遣いをその耳に聞きながら、胸の谷間の奥に見える恥丘へおずおずとローターを差し伸べる。
さっき学習した、いきなり触れず周りを優しく刺激していく、という事を実践しながら。

「うあっ、やっぱこっち……も、たまらね、ぇ……」

肉芽がら湧き出すようなジクジクとする痒みにも似た感覚が胸を締め付ける。
源泉に優しく触れてやれば充足感と気持ちよさが弾け、動かすつもりがなくとも腰が勝手に跳ねて止まらない。

「あ、あ、あ、あっ……んーっ!も、もっと……強く……!」

ローターを肉芽の下から押し付ける、これが一番いい、一番気持ちよく感じるスポット。
そう理解すればもう止めようがなかった。

頭が痺れる、胸がいっぱいになる。でも、もっともっとだ。
より直接的に振動を楽しめるように、と、ピンクの卵を恥肉の中に埋もれさせるため指に目いっぱい力を込め、そして

「ふああぁぁぁああぁぁぁぁっ……!」

振動の調節メモリを一気に最大まで引き上げてしまっては、成す術もなく喘ぎ果てる以外に何ができるだろう。

間違いなく今までで一番の快楽。
絶頂に押し上げられイってしまった余韻の中、ぼんやりとした意識でそう思い、そして考える。
ただ指でするより道具を使った方が気持ちいい、なら、もっと先は?もっと奥に更なる快楽があるのでは?

ヴヴヴヴヴヴ

そんな考えに耽る俺を引き戻してくれたのは床に落ちたローターの音。
ああ、そうだ……オナニーの後片付けと、薬を使用する際の約束を守らないといけない。
まだ火照りの残る体をのろのろと起き上がらせ、気持ちを切り替えるため軽く頬をたたく。

女の子に変身している時間は確かに素晴らしいが、あくまでこれは特別な事。
俺には俺の日常があるのだから、そっちに影響が出るようではだめだ。
正直後ろ髪を引かれる思いはある、けれど、この先何度でも楽しめるのだから、と。

そう自分を納得させベッドから立ち上がり後片付けを始める。
今日の自分の痴態を明日のおかずに使う事を楽しみにしながら。

────────────────────────────────────────────────────────

「きよひこクンにだけ特別よ、私がローターではしたなくイっちゃう姿、たくさん見てね?」

「や、やあ……きよひこクンに見られながら、感じちゃって……ん、あ……やだ、恥ずかしよぉ」

「あああっ!でも……いい、いい気持ちいい!クリトリス震えて、私もう……イクっ、イっちゃう……!」

左手に握ったスマホから聞こえる甘ったるく媚びた喘ぎ声。
しかし、精子を出し切った後の気怠い疲労感に苛まれている今、俺の性欲を滾らせるには至らない。

「はー……」

再生を止めたスマホをベッドの端に追いやれば思わずため息が漏れてしまう。
ノリノリな映像の中の俺とは違い、少しばかりの無気力感に悩まされているためだ。
抜いた後の脱力感かと思ったけれど確実に違う別の感覚。

それを意識するようになったのは大人の玩具を使った自慰をし始めた後の事。
いや、それは正確じゃない。
正しくは俺が理想とする女の子に変身し始めてから、だ。

最初はもう夢中で抜いた。
そりゃそうだ。
こんな子を恋人にして、あわよくばエッチなことまでしたいと思う理想そのままの女の子が、
映像の中とは言え、俺の名前を呼んでオナニー姿を見せつけてくるんだから。

でも、だからこそ、回数を重ねるにつれ体に反して心は萎えてしまう。
こんなにエッチで好みなのに、この子とは絶対に一緒にはなれない、と。
当たり前だ。
自分が変身して都合のいい言葉を録音しているに過ぎない、そんなの最初から分かっていた事のはず。
(なのに、なんで今更……)
言葉に出来ないもやもやだけが濃く大きくなっていく。

「こんなふうに考えるようになるなら、最初と同じように二次元の女の子のだけ楽しめばよかったな……」

止めた映像を再び再生させながら呟く。
そこに映るのは今の俺と真逆。
楽しそうな表情を浮かべるもう一人の自分。
手の中の彼女は同じ自分なのに、なんでこんなにも幸せそうなのだろうか。

実際女の子のオナニーをしている時は楽しいと感じるし、それ以上に気分が高揚し幸福感を感じるのは確か。
なら男で同じように感じられないのは何でだろう。
後腐れのない一時的な享楽と現実の性との差だろうか、それとも単純に女の子の方が良いという事であろうか。

面白味のない男の日常と、一日数時間限定の女の子の性生活、そのどちらが充実しているのか。
今問われたなら後者と答えるのはまず間違いない。
日常を過ごせるのはこのご褒美の時間があるからだ、とすら言えるくらいに依存度が高くなっていた。

女の子の物置場と化したクローゼットの片隅へ目を向ける。
最初はローター一つであった大人の玩具、女の子らしく呼ぶならラブグッズ。
今や電動マッサージ機とそれらを洗う洗浄液等も仲間入りし、片手の指に余る数のローターが押し込められているのも見える。
この光景こそ最も端的に俺の心の現実を表している、そう言えるだろう。

「あ、そうだそうだ、忘れるところだった」

不意に脳のスイッチが切り替わった。
集められた道具を見たことが引き金となったのか、今日やろうとしていた事を思い出したのだ。
それと同時に、重く沈んだ心が軽くなる。
最近女の子の楽しみを考えるといつもこうだった。

つい先刻とはうって変わった軽い足取りで俺はパソコンの前に座る。
今日も見るのはラブグッズを扱う通販のページ、ここでまた新しい物を買おうと思っていたのだ。

「これ、だな……」

目当ての物を検索し、食い入るように見つめる画面に映るのは、歪な形をした細長いモノ。
「処女用バイブ」
との文字と写真を見て胸が高鳴る。
後は今までと同じ、何度か繰り返してきた購入の手順を済ませるだけでいい。
唯一違うと言えるのは、ラブグッズを買うという事にもう何の躊躇も感じなくなった、という点だけだった。

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